お題:ねじれた女 必須要素:ミュンヒハウゼン症候群 制限時間:1時間 読者:94 人 文字数:2011字 評価:1人

なんかロボット
「お、おはよう」

該当男性による挨拶。
距離、二メートル二三センチ = 常態よりも約五十センチほど遠い。

推察。

体調不良のためか → 不健康を示す所感はない。
朝のためか → 彼は早起きだ。 → そして私は二度寝が大好きだ。

判断保留。
これ以上は思考の必要がないと判断 → 出力。

「おはようございます」

更に十センチ離れる。
該当男性の、怯えた表情・肩の強張り・震えた唇 = 怯えている?

原因不明。

推察。
私が遅刻もせず・眠そうでもなく・不機嫌でもなく・丁寧語で返答をしたため → 問題ない。

「はやく行きましょう」
「な、なあ!」

腕を掴まれる → 敵対行動? → 反撃の必要あり。

カバンにある防犯スプレーを噴霧すべき・大声で助けを呼ぶべき・近距離だ噛みつけ・該当男性はなぜ瞳を潤ませてる・てーか顔近い = 私、混乱。

「やっぱ、怒ってるか?」

心配そうな声。

ノイズ。
思考に不備あり。
発言意図不明。

「昨日のことは、誤解なんだよ、ホントに……」

観察。
泣きそうな表情・眉が八の字・カバンを持つ手が強い・私の腕を掴む手も強い・隣のクラスの女子がチラ見しながら通り過ぎる → ヤバい。

「なんのことですか、手を離してください」

声を張り上げた警告は効果を発揮。「わ、悪い」と言いながら手を離す。
該当男性が会話可能な知的生命体であることを確認。 → 割とホッとする → ついでに再認が必要ありと判断。

「私は――まったく気にしていません」
「そ、そっか、俺の方が自意識過剰だったかもな。あ、ちゃんと説明するな、昨日のあれは――」
「だって私はロボットですから」
「待て」
「はい」

顔色が青い → 体調不良? → この短時間で → 新型ウィルスの可能性。

「なんて言った?」
「当方は自立学習人型オートマトンであり、飛沫感染を警戒する必要はありません」
「いやいや違うだろ、何言ってんだよ?」
「現在、私の思考は完全logikシステムで可動しており、ロボット工学三原則は組み込まれていません、ですから病院に行きましょう?」
「お前が?」
「望むなら、私も一緒について行きますが」
「俺かよ! というか待って、待った」

当身体システムは未だにロボット化が果たされておらず、該当男性の抵抗を押し切ることができない。

思考。
やはり一度気絶させるべきか。
当生体機体にスタンガンが内臓されていないことが悔やまれる。

「ひょっとして――」

呆然とした顔・途方に暮れた・カバンを取り落としている = 該当男性は困惑している。

「ミュンヒハウゼン症候群とか、そういうのか……?」
「体調・論理演算共に不調も問題もないことを申告いたします」
「俺が知る限りお前がそんなことを真面目に言ってる事実がもう深刻な不調だよ!」

ミュンヒハウゼン症候群とは、虚偽の身体的精神的不調を訴える症状のことを言う。
代理ミュンヒハウゼン症候群では周囲の人間を病気にするが、こちらは本人が本人自身を病気にする。
ロボットである私がそうなる理由はどこにもない。

「やっぱ昨日のあれか? あれが原因なのか? なあ、本当に違うんだって……!」

原因? → どのような意図による発言か → この場合は私の発生理由? → 私は該当男性に作成された事実はない = 該当男性は混乱している。

「やはり病院に行くべきだと推察します」
「それ俺が行くべき言ってるよな、やっぱり。ああだから、もうごめんって謝るのもなんかヘンだよな。とにかく、俺の説明聞いてくれよ……!」
「本日の最高気温は二十八度、熱中症の警戒が必要です」
「というかずっと無表情でいるお前、すげえ怖い! せめて怒るとか笑うとかしてくれ!」
「当機体の表情筋を稼動させる理由が現在ありません」
「すげえ怒ってるように見えるんだ、っていうか違う、違うんだ、俺が話を逸らしてどうする。とにかく俺は――」
「このままでは高確率で遅刻します、移動する必要があります」
「なあやっぱお前怒ってないか!?」
「私はロボットです」

違うというまったく論理的ではない悲鳴を背後に移動を開始 → カバンを放置していたことに五歩目で気づく → 論理不調? → 論理的帰結とは言えない。

そう、私はロボットだ・機械だ・ものを思わぬ物体だ = 心など無い。

だから、当該男性が昨日、誰か見知らぬ人と抱き合っている場面を目撃しても、なんら問題はない。ないったらないんだ。

該当男性が周囲を回りながら喋りかけている。

観察。
必死な顔・罪悪感もあり・そして必死 = なんか一生懸命だ。

エラーが発生した。
深刻なエラーだ。
該当男性の様子を見て発生した。

私の表情筋が動いていた・移動速度が速まった・眉が寄る

→ なんか、嬉しかった。



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