お題:高貴な時計 必須要素:予備校 制限時間:15分 読者:159 人 文字数:860字

秒針様と解答欄
とにかくもう時間がないということが今現在差し迫った非常に由々しき事態なのであって、それ以外にかかずらっている暇などもう自分には一切ありはしないのだった。だからひたすらに手を動かす。手を、動かす。頭が動くより先に手を動かすのだから本当はこれほどに意味のないこともないのだろうが仕方がない。目の前にある空白を埋めないことには可能性はゼロのまま。であれば何でもいいからとにかく埋めろというのが一般的に推奨されることも自明。自分がそれに従わないためのもっともな理由は今のところない。だから、とにかく手を動かす。

机の端、視界の隅に入るように置いた精密機械はちっちっと微かな、それこそペン先が紙を擦る音にすらかき消されるほどに小さく、しかしどういうわけか今の自分にとっては耳障りなほどに響く音を立てながら生きている。とても律儀に正確に、冷酷に。あと、何秒?

息をする時間さえも惜しい。残り時間を確かめるとそのくらいなら息を止めていても生きられそうだった。どうせ脳に酸素を送ったところで使っている余裕などないのだからいっそ息などしなくていいのではないだろうか。そう、これは無酸素運動なのだ。百メートルを全力でダッシュしろ。そういうことだ。誰かツッコミを入れてはくれないだろうか。

長い針を追い抜いて細くすらりと美しく最も気高い様相を呈した銀色の針が盤面の直上に到達し、そしてまた下りの時を刻み始めた。無上な声はあと数個の空白を埋めるための慈悲をくれることもなく、自分は涙を飲んで未完成の紙をただ見送る。模擬試験でこれなら本試験ではもっと時間が足りなくなるに違いない。カレンダーを見てももう猶予はあまりないというのに、一体どうしたらいいのか。ふわふわとした雲のようなものに包まれた頭はろくに物事を考えられず、疲労感が身体を苛む。

視界の隅の時計はひどく澄ました様子でやはり勤勉に時を刻んでいて、それが一瞬とても高く尊い存在であるかのように思われた。疲れている。
さあ、腕に戻りなさい。そう言って自分は腕時計を手首にはめ直した。
作者にコメント

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