お題:鈍い償い 制限時間:30分 読者:229 人 文字数:1030字

死の代償は地獄

「君、本当に自分のしたことが分かっているのか」

「えぇ、たぶん分かってると思います」

「たぶんってな‼それが本当に反省してるやつの態度か‼」

「反省してます。それは間違いない」

少し重いボストンバックを肩にかけて立ち上がる。ちょっとよろけた。

「それでは、僕はこの辺で失礼しますね」

「おい!お前!あんまりふざけたことしてるんじゃないぞ!」

「僕はいつでも真面目で、本気です」

畳の匂いを、精一杯吸い込む。これで、この家の匂いともお別れだな。

「今、俺が何を考えてるかわかるか」

「たぶん、僕と同じこと考えてます」

「本気か?」

「言ったじゃないですか。僕はいつでも真面目で、本気ですよ」

玄関の扉を静かに、後ろ手に閉めた。


僕のすべてに
サヨナラだ





「母さん。もうそろそろ、優子が行くころだな」

ここの座布団に座るのは、ひどく久しぶりのような気がした。

「あいつは、男を見る目はなかった。お前に似たのかな……。俺も、お前を死なせちまったからな」

涙が頬を伝う。止まりそうにない涙を拭う気にはならなかった。

「あのろくでもない男が、もうすぐ行くと思うから、その……」

よろしく頼む





「あのね、君は真面目すぎるんだよ」

「僕がかい?」

「だって、なんでも適当は許さないでしょ?」

「そうかな」

「うん。完璧主義者」

「そこまでじゃないと思うんだけど」

「そんなことあるよ」

「そうかな……、魚焦げ始めたよ」

「やばっ」

いつかの居間での会話だ。その時はお義父さんちょうど出かけてて、久しぶりに一人っきりだった。

こんな時にまで思い出して泣いてるなんて、僕は相当彼女が好きだったらしい。

いや、確かに好きだったんだ。うん、好きだった。

「さ、彼女に会いに行こう」





「やっぱり、綺麗なお墓だね。お義母さんに会えたかな。十年ぶりの再会だろ?あんまりキツイこと言っちゃだめだからな」

話しかけながら、あの時のサンマの匂いを思い出していた。

あの後、彼女と約束したんだよな…。



「あのね、お願いがあるんだけど」

「なに」

「私より先に居なくなっちゃだめだからね」

「もちろん」

「お父さんよりも先に逝っちゃだめね」

「分かった」

「誰よりも最後まで生きてて」

「それってひどくないか」

「そうかも」



約束は守るよ。とりあえず、君よりは長生きだ。
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