お題:思い出の妻 制限時間:4時間 読者:202 人 文字数:500字

思い出の中では美しいのに
「はぁ……はぁ…………。」
 妻の介護に疲れた私は、ソファーに深く腰掛ける。
 ふと、私は傍に置かれていた写真立てを眺めていた。
 写真立てには、若かりし頃の私と妻が写っている。
 私は妻と会ったばかりの頃を思い出していた……。



 私と妻が出会ったのは、今からちょうど15年前になる。
 半人前の飼育員だった私が、妻と出会ったのは、研修先の牧場であった。
 くりくりした瞳に、艶の良い白黒の毛並み。そして、凛々しい「モ~」の鳴き声……
 妻はこの牧場で飼われていたホルスタイン牛であった。
 妻に一目惚れした私は、早速牧場主に頼み込んだ。
 最初はズーフィリアなどとバカにされたが、懸命な頼み込みとコツコツ貯めた資金によって、牧場主もついには折れ、妻との結婚が認められたのだ。
 結婚式で花嫁姿になった妻の姿は、今でも忘れられない……。



 それから15年。
 今や妻は牛舎にて豚のように肥え、濁った目で虚空を見ている。そこにかつての姿はない。
 私も騙し騙し妻の介護をしてきたが、もうこれで限界だ。
 部屋から猟銃を取り出し、妻のいる牛舎に行く。
 苦しんでいる妻を楽にさせるために。
作者にコメント

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