お題:狡猾な整形 必須要素:TOEFL 制限時間:2時間 読者:191 人 文字数:1570字

逃れ得ぬハッカーの定め

 私は窓の方を見やる。
 酸性雨の降る暗い都市のどん底に、手術したばかりで包帯ぐるぐる巻きの私の姿が映っている。
「よう。調子はどうだ? 痛いところはないかな?」
 浅黒い肌の男が私に気さくに声をかける。
「ええ。今のところは痛いところも痒いところもないです。」
「それは良かった。」
 白衣を着てないが、彼はれっきとした医者だ。医者と言っても、私のようなわけありの者たちの手術を行う闇の医者だが……。
「んじゃ、これやってもらうか。」
 彼はそう言って、何か本を私に渡す。中身は英語の教材のようだ。
「何ですか? 英語の教材の様ですが……?」
「TOEFLの教材だ。包帯が採れるまでの間、英語の勉強をしてもらう。お前に用意された身分証では、英語圏に住んでいる労働者ってことになるからな。」
「はぁ……。」
「んじゃ、俺は他の患者の面倒を見てくる。」
 そう言って、彼はまたどこかに行ってしまった。
 私は本を読みながら、過去の回想をする。



 私が住んでいるところは所謂、スラム街と呼ばれるところであった。
 綺羅びやかな都市の底辺で、人から物を奪わなければ生きてはいけない、そんな世界だ。
 だが、私には幸いなことにハッカーとしての才があった。
 私はその才を用いて、銀行をクラッキングして電子マネーを奪ったり、企業に不正アクセスして機密情報を手に入れて流したり……と、謂わば電脳世界での怪盗ごっこのようなことをしていたのだ。
 だが、金は手に入る代わりに私の悪名は上がっていく。ハッカーとしての仕事の最中、命の危機にさらされることも度々あった。
 だがら私は決意した。スラム街で腕利きのハッカーとしての名を捨て、一市民として平穏に生きていくことを。



 本を読んでいる最中に唐突に周囲の電気が消え、非常用電源に切り替わった。
 どうやら何かあったらしい。
 私は周囲の様子を見ようとすると、耳障りな機械音が鳴る。
「我々は治安維持機構の者である。不法滞在者を匿っている罪により、貴様を連行する。」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
 先ほどの彼が、すごい勢いで後ずさりしてきた。どうやらここは、この都市の治安維持機構の軍に見つかってしまったらしい。
「抵抗すれば射殺も辞さない!」
 さて、どうするか……? 今の私なら奴らの武装をハッキングして返り討ちにしてやることも可能であるが、せっかくの身分証がバレてしまうし、何よりツールがない。
 彼には私の顔を変えてくれた恩義が一応あるが、スラム街に住む者はいつか何処かで野垂れ死にする定めだ。諦めてくれと言い様がない。
「い、命だけはお助けを~!!」
 命乞いしているにも関わらず、今にも射殺せんとする治安維持機構の後ろに私が逃げようとした、その時だった。
「今、治安維持機構の後ろにいる奴! そこからとっとと離れろ!!」
 いきなりの怒声に私は咄嗟に離れる。すると、ミサイル弾が私の横を掠め、治安維持機構の背中に着弾した。
 爆風で彼と私は吹き飛ばされ、治安維持機構だったものは前のめりに倒れこんだ。
 私と彼がミサイル弾を放った方向を見やると、そこには多くの銃火器を背負った男がいた。
 その体は多くの銃火器を背負えるようにか、機械化されている。
「貴方がここの医院を営んでいる医者ですね? 患者たちは私が避難させておきました。」
 と、男の側にか弱そうな女が現れる。
「ああ、ありがとう……。」
 彼は力が抜けたように返事をした。
「腕利きのハッカーがここにいると聞きます。宜しければ、その人を紹介してくれないでしょうか?」
 彼は私の方を見やる。治安維持機構の手から救ってくれた彼女たちの目的は私らしい。
 どうやら私が夢見る平穏は、まだまだ先のようだ……私はため息を付いた。
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