お題:限りなく透明に近いいたずら 必須要素:東京 制限時間:2時間 読者:186 人 文字数:1666字

限りなく透明に近い僕ら

「今日はこのスケボーを借りてきたぞー。」
 僕は店から借用してきたスケボーに乗りながら、相方のもとに戻ってくる。
「借りてきたんじゃなくって、盗んできたんだろ?」
「てへ。後で返すからさ。」
「傷とかつけんなよ……。」
 相方は僕の毎度のいたずらに注意はするものの、それだけだ。
「今日は何処行こっか?」
「今日は海風に当たりたいな。」
「んじゃ、夢の島公園辺りに行こうか。」
 僕は相方をスケボーに乗せ、車の走る道路を駆け抜けて行く。
 店から泥棒してきたスケボーに二人で乗って車道を駆け抜ける僕たちを、咎める者はいない。
 僕らは街をゆく人々にとって、限りなく透明に近い存在だからだ。



 僕らは車に轢かれそうになりつつも、何とか夢の島公園に辿り着いた。
 相方は公園に流れる海風に当たっている。
 僕は屋台から拝借したパン二つを持って、相方のもとにやってくる。
「はい、今日の昼食のパンな。」
「なぁ。」
「ん?」
 相方はパンを食べつつも、僕に問いかけてくる
「今の暮らしに満足しているか?」
「んー……満足といえば満足かな? 東京は温かいし、飯にありつけるし、何より物がいっぱいあるから飽きないし……」
「例え、気づかれることがなくても……か?」
「へ?」
 僕は気楽に答えたものの、相方の目は何やら深刻そうな目をしていた。
「お前は良いよな……周りの人に無視される辛さを、物欲で癒せるんだから。」
「何を……言っているんだ……?」
「たとえこんな風に、俺がいなくなっても……!!」
 相方は突如、走ってきたトラックに飛び込もうとする!
 僕は走った。相方を救うために……!!



「なな、何だ? 猫を轢いちまったのか……?」
 トラックの運転手が降り、冷や汗をかきながら轢いた異物の正体を探ろうとする。
 だがトラックの後ろには、轢かれてボロボロのスケボーしか無かった。
「なんでスケボーがこんな所に……?」
 トラックの運転手は念の為に、警察に連絡した。



「……ごめん、な。」
 僕は道路脇にいた。
 相方は……僕が抱えている。
「俺は……生きているのか……?」
「スケボーを傷どころかダメにしちまったみたいだ……。」
 僕がそう謝ると、相方はふふっ、と笑い始めた。
「まず謝るところはそこかよ。」
「ああ、そこじゃなかった! ごめん! 僕は今まで相方のことをろくに相手にしてやったことがないけど、僕、相方がいないとダメなんだ!! だから、さっきのようなことはしないでくれるかな……? 今度はちゃんと、相方を相手してあげるからさ!」
「いや、俺も謝っておく。先ほど試すようなことをしてごめん。お前は俺のことを気にも止めないような奴だと思っていた。だが、これでお前の本心を知ってからは、申し訳ないと思う。」
 周りは警察が集まってきて騒がしくなってくる。
「騒がしくなってきたね。」
「一旦退散して、静かなところでも行くとするか?」
「そうしよう。」
 僕たちはその場から退散した。



 陽はすっかり傾き、ビル風が寒く感じてくる。
 僕らはとあるビルの屋上にいた。相方が毛布を持ってくる。
「お前のアドバイスを聞いて、毛布を借用してきたが……」
「おー、よくやったじゃん! ハイタッチしような!!」
「お、おう……。」
 僕と相方はハイタッチをしあう。
「この毛布大きくて二人入れるな。」
 と、僕は僕と相方を二人を毛布で包み込む。相方のぬくもりが感じられてとても暖かい。
「…………。」
「どうした? 疲れたのか? それとも持ってきた罪悪感が残っているのか? それとも先程のことをまだ気にしているのか?」
「その、どちらでもない。いろいろ考えていてな……。」
「へぇー。」
 相方のぬくもりを感じているうちに、僕の意識が微睡んでくる。
「なぁ……?」
 相方が意を決して声を掛けた時には、僕はすっかり寝入っていた。
「…………告白は、また後日か。」
 相方のそんな声が、聞こえてきた気がした。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:まろやかに傾く人 お題:ぐふふ、医者 必須要素:東京 制限時間:15分 読者:48 人 文字数:281字
ワクチン1本7万円。「ぐふふふふ」 笑いが止まらないとはこのことか。 ここ東京で発生した新型ウイルスの特効薬。 多少割高だが、日本人なら払えなくもない額だろう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:とんでもないふわふわ 必須要素:東京 制限時間:30分 読者:51 人 文字数:907字
「あらシオリちゃんいらっしゃーい」「どうも、コーヒーでお願いします」 見慣れた喫茶店のドアを開けると、見慣れた顔と見慣れた声が私を出迎えてくれた。半年前に一目惚 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:幸福な決別 必須要素:東京 制限時間:15分 読者:93 人 文字数:861字
「来月、実家に帰るんだ」私にとって、この関東圏での貴重な友人がそのようなことを述べた。場所はサイゼリア。私はその時、ほうれん草のソテーを食べていたが、次の一口を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ひよこぴよこ お題:名付けるならばそれは小説家たち 必須要素:東京 制限時間:1時間 読者:80 人 文字数:1437字
薄暗い空を青い翼が切り裂いてゆく。不意に頭上に現れた幻視に、足を止めたのはサイトウただひとりだった。黒い煤に覆われた街、かつてここは東京と呼ばれていた。サイトウ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:冷@羚風 天 お題:せつない栄光 必須要素:東京 制限時間:1時間 読者:90 人 文字数:776字
僕は成功者さ。絶対にそうだ。そう思っていた。なんといっても、幼年期からの成績トップ、名門校のトップ合格と卒業を喫したのだから。こんな僕に失敗なんて有り得ない。そ 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:すぺ松@文フリ東京サ-20 お題:難しいロボット 必須要素:東京 制限時間:30分 読者:113 人 文字数:2349字
自慢じゃないが結婚願望で言ったら、私はそんじょそこらのやつらに絶対敵わないと自負している。だが、それには障害がつきまとった。そう。金だ。式を挙げるのにも、自分以 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日向白猫@物書き お題:ありきたりな悪人 必須要素:東京 制限時間:1時間 読者:152 人 文字数:2531字 評価:0人
「見るからに悪人面してますね」 突然声を掛けられる。東京のとある路地。昼下がり。 俺が振り返ると、そこには一人の女の子が立っていた。中学生くらいだろうか。目鼻立 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:ありきたりな悪人 必須要素:東京 制限時間:1時間 読者:185 人 文字数:3359字 評価:0人
「私の命もここまでか・・・」自らの傷口に手をあてて、魔王はそう言った。それからやつの頭が、俺たちのいるこっち側とは反対、向こう側に倒れて見えなくなった。「はあ、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:佐藤(sugar)/いちご298円 お題:ありきたりな悪人 必須要素:東京 制限時間:1時間 読者:174 人 文字数:2706字 評価:0人
東京駅に降り立った時、それはそれは驚いた。人が多いというのは聞いていたが、これほどとは想像もしていなかった。村の祭りでもこれほどの人は経験がない。寺のお堂に近隣 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:inout お題:ありきたりな悪人 必須要素:東京 制限時間:1時間 読者:323 人 文字数:2648字 評価:0人
東京の地下鉄というのは、どうしてこんなにも深々と掘っているのかと疑問に思いながらも、エスカレーターに乗り続けて降り続けている。帰宅の途中で頭の中はぼんやりとして 〈続きを読む〉

リケリケ@陰龍も一本釣りの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:3月の春雨 必須要素:警察 制限時間:4時間 読者:134 人 文字数:2253字
「住宅街に出没していたニジウメロカバ、捕獲!」 それは三月のピンクの春雨は降りしきる頃であっただろうか? 警官がニジウメロカバを確保していた光景を見たのは。 そ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:めっちゃ電車 制限時間:2時間 読者:209 人 文字数:140字
ガタンゴトン、ガタンゴトン……私は驚いた。電車に乗っているモノたちが人間ではなかったからだ。プオン!それは、甲高い空気音を発した。電車の中に乗っていたのは……電 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:思い出の妻 制限時間:4時間 読者:164 人 文字数:500字
「はぁ……はぁ…………。」 妻の介護に疲れた私は、ソファーに深く腰掛ける。 ふと、私は傍に置かれていた写真立てを眺めていた。 写真立てには、若かりし頃の私と妻が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:私のお嬢様 制限時間:30分 読者:183 人 文字数:659字
「はぁ……はぁ……もうダメ…………」 お嬢様は弱音を吐いた。「その程度で弱音を吐くのでは、1stステージすら乗り越えられませんよ?」 そんなお嬢様に私は叱咤を与 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:狡猾な整形 必須要素:TOEFL 制限時間:2時間 読者:190 人 文字数:1570字
私は窓の方を見やる。 酸性雨の降る暗い都市のどん底に、手術したばかりで包帯ぐるぐる巻きの私の姿が映っている。「よう。調子はどうだ? 痛いところはないかな?」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:限りなく透明に近いいたずら 必須要素:東京 制限時間:2時間 読者:186 人 文字数:1666字
「今日はこのスケボーを借りてきたぞー。」 僕は店から借用してきたスケボーに乗りながら、相方のもとに戻ってくる。「借りてきたんじゃなくって、盗んできたんだろ?」「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:昔の誤解 必須要素:テレビ 制限時間:2時間 読者:172 人 文字数:1400字
* 昔、私はテレビでこんなことを知った記憶がある。 ご飯はオリゴ糖を含むため、腸内環境改善するのに適している、と。 それを信じた私は、毎日ご飯を欠かさず食べたも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:悲観的な犬 制限時間:15分 読者:208 人 文字数:148字
――アオオオオン……アオオオオン………… 犬の遠吠えが聞こえる。飼い主に戻ってきてほしいと嘆願しているのであろう。 だが、その言葉なき嘆願は聞き入れられること 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:オチは秋 制限時間:15分 読者:143 人 文字数:57字
冬に種まき、 春になって芽が芽吹き、 夏になって花が咲き、 秋になって実が採れる。 これってな~んだ? 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リケリケ@陰龍も一本釣り お題:激しい税理士 制限時間:15分 読者:167 人 文字数:80字
えーと、失礼します。こちら税理士です。 そちらの企業では脱税の疑いがあるのでやって来ました。 容赦はしませんよ?(社長にロックをかけながら、問いかける) 〈続きを読む〉