お題:夜の作品 制限時間:15分 読者:172 人 文字数:746字

ウプラとロレンシオ
 なかよウプラとロレンシオはある冬の日に家出をした。
 ふたりで手をつないで、落ちてくる氷柱をきゃあきゃあ言いながら避けて雪の森へ一直線に駆けていき、そして消えた。
 おとなたちはみな、ウプラとロレンシオの可愛らしい声に頬をゆるませただけで、別段止めはしなかった。ふたりがどこかへ行って、しばらく帰ってこないのは珍しいことではなかったからだ。
 だけど、ウプラととロレンシオがつめたい死体になって帰ってくるとわかっていたら、きっと止めただろう。
 家出の原因は今をもってしてもわからない。
 ふたりとふたりの両親は、不幸ではなかったが幸福でもなかった。良い状態だった。
 ロレンシオがちょっとだけわがままで、ウプラがちょっとだけ大人しい子どもであること以外は。
*
「ね、ウプラ。成功したね」
「うん、ロレンシオ、成功したね」
 吹雪の中で、二人はニコニコ笑いあった。
 おとなたちに黙って、どこか遠くに行こうと言い出したのはロレンシオだった。
 朝、金の巻き毛を揺らしながら目覚めたロレンシオは隣で眠っているウプラに抱きついて「家出をしよう!」と囁いた。
 もちろんウプラの返事はこうだ。「すてきなアイデア!」
*
「ねえ、もうすぐ夜になるよ」
「そうだね、夜になるね」
 歯をカチカチ鳴らして、ロレンシオは答えた。
「家に帰ろうか」
 ウプラはなにげなく言ってみる。ふと思いついたように言わないと、ロレンシオが拗ねてしまうから。ほんとうはずっと家に帰りたいと思っていたのが、大好きなロレンシオに嫌われたくなくて黙っていたのだ。
「だめだよ、ウプラ。これは家出なんだから」
 ああ、とウプラは思った。これは家に帰れないぞ。こうなったらロレンシオに付き合うしかない。ずっとずっと、いつまでも。
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