お題:元気な運命 制限時間:15分 読者:448 人 文字数:907字

時にはマスタードのように
 もし明日君に出会っていれば、僕はケチャップまみれのみっともない姿を君に見せないで済んだはずなんだ。もし昨日君に出会っていれば、僕がアイスクリームの代金が足りなくて泣きそうな子供に50セント恵んであげたところだったかもしれない。でも僕が君に出会ったのはついさっきの今日の話で、運悪く僕は食堂のおばちゃんが片づけ忘れたモップを踏んで転んで、ジョニーのホットドックの皿に着地しちまった場面に君がやってきたんだ。情けないったらありゃしない。

 そもそも僕は君のことがずっと気になっていたんだ。豊かなブロンドのエイプリルといつも一緒に居る控え目なベス。山のようにラブレターを貰うエイプリルと一緒にどの男がいいかを相談しているベス。僕は派手なエイプリルより、可憐なベスのほうが大好きなんだ。

「まったく、金髪がマスタードでさらに黄色くなるところだったわ」
 ジョニーと一緒に座っていたエイプリルは笑っているが、ベスは僕のシャツのシミを落とそうとしてくれている。
「汚れてしまっているわ、簡単に落ちない」
 そうとも、多分簡単には落ちない。
「いいよ、転んだ僕が悪いのさ」
 僕はジョニーに代わりのホットドッグを買い、エイプリルにはアイスクリームを買ってやった。エイプリルはジョニーにお熱なのだ。

 ジョニーと二人きりになりたいエイプリルは、その後すぐにベスと別れた。僕は今こそチャンスと思ってベスに話しかけた。
「お礼に今夜一緒に食事でもどうだい? 君のハンカチも今すぐクリーニングしないと」
 ベスは何だか困っているようだった。
「でも、さっき顔を合わせたばかりの関係よ」
「いいや、僕はずっと君に興味があった」
「あら、口説いているつもり?」

 やっとここまでたどり着いた。未来の嫁さんの、昔の姿。これからやっとまた嫁さんと恋人同士になって、かわいい子供たちに会える。死の間際に神様に「もう一度人生をやり直したい」なんて願ったら、いつの間にか子供時代に戻っていた。でも逸脱する人生が怖くて、今日もわざと転んでまたベスと巡り合えた。

「どうしたの? 涙が出ているわ」
「おかしいな、さっきマスタードが入ったかな」
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