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硝子の海を口腔に匿う ※未完
 遠い未来、水は密漁の対象となった。
 数光年の距離を隔てて宇宙に散らばる地球移民の子孫たちが、こぞって母星の水を欲したためだった。人工的に生成した水分では駄目なのだ、と彼らは口を揃えて言う。あの青い星、小さな青い星を満たす海の水でなければ駄目なのだ。それだけが本当の水なのだと。

 別に珍しい話ではない。ひとが宇宙に興味を向けるよりもずっと昔から、水は信仰の対象だったのだから。 
 死ぬまでにたった一度で良いから、地球の水が飲みたいと言って、彼らは泣いて水を求めた。求められたので商売が生まれた。今では、この小さな星は、日々宇宙へと漏れてゆく水を留めるのに必死だ。海面は下がり続けている。かつて没した島がいくつも海上に姿を現したが、喜ぶ地球人はほとんどいなかった。

 そして今日も。

「海水の持ち出しは禁止だ」

 砂浜に屈みこむ小さな背中に銃を向けながら、監視人は機械のように言う。もう何百回と繰り返した台詞だった。
 振り返った小さな子どもは、その赤ぎれた両手に小さなガラスびんを抱えていた。宝石のように光る瓶の中には、海水

 ああ、見つけたくなかった。こんな子ども。
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