お題:嘘の旅行 必須要素:えへへ 制限時間:30分 読者:665 人 文字数:1021字

クチサキトリップ
「ヒトノウワサモシチジュウゴニチ? 合ってる?」
 最近髪を短くした彼女が、小首を傾げて尋ねてくる。正直、とってもかわいい。
「合ってる合ってる。75日ね」
 彼女は、合ってる合ってる……と呟いて指を折りながらなにかを数え始めた。なにしてるんだろう。わからないけど、とにかくかわいい。
「75日後は何月何日だ?」
 そうだな……。ざっと二ヶ月半だから、6月のアタマくらいだろうか。
「さあね、ずっと先じゃないかな」
 僕はこう言った。彼女はとっても残念そうな顔をした。垂れた眉毛とぷっくりとした唇がなんともかわいい。
「そうかぁ……ずっと先かぁ……」
 僕は微笑んでいた。口角が吊り上っていた。押さえ切れなかった。だってだって、彼女が僕の目の前にいる。噂がみんなから消え去って、何も無かったかのようになるのはいつかと、困った顔で僕にきいている。
 彼女は最近髪を短くした。どうしてか。少し前から彼女と交際していた男に別れを告げられたからだ。とても古臭い理由だが本当だ。どうしてこんなにもかわいい彼女が捨てられたか。それはとても些細なことだった。彼女のよからぬ噂がその男の耳に入ったのだ。男は器の小さい奴だった。そんなつまらない、くだらないことで彼女を傷つけた。全く、僕のいちばんの友達だったというのに。とはいえ、彼女のよからぬ噂の発端は言うまでも無くこの僕だから、僕も大概他人の事をとやかく言うことはできないのかもしれない。
 最初はこんなにうまくいくと思っていなかった。バレて彼女に嫌われてしまったらどうしようかと、実行を躊躇う場面もあった。しかし僕は経験上、悪い噂の浸透力というものの恐ろしさを知っていた。だから賭けた。
 結果は大成功。噂は男からクラス、クラスから学年へと広がった。もともと、かわいくておっとりキャラの彼女には敵が多かった。嫉ましく思っている輩も多かっただろう。そのおかげで、彼女は居場所を無くした。ひどい言い方をすれば、彼女の居場所をなくすことに成功した。噂は僕から出発して多くの人間の口先を渡り、尾ひれや背びれをくっつけながらその旅を終えたのだった。
 居場所を失った彼女には、僕しかいなかった。だから彼女は今、僕の目の前にいる。噂が消えるのを指折り数えて待っている。ああ、そんなの意味無いよ。いや、必要無いよ。君には僕がいる。僕がいるよ。
「僕がいるよ」
「んー?」
「君には、僕がいる」
「えへへ、ありがとっ」
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