お題:阿修羅探偵 制限時間:15分 読者:608 人 文字数:1678字

[現代]阿修羅ナル探偵
[ジャンル:現代?]

 阿修羅という単語がある。
 仏教やインド神話、様々な場所に出てくる単語だが、元来は神の一人の扱いであった。
 しかし、徐々に「神に敵対するもの」という意味になっていき、ついには悪神を取りまとめて「アースラ」と呼ばれるようになってしまった。
 文化や神話は、人の口によって伝わっていく。そして、形質は変化していく。
 遂には、阿修羅は日本においては阿修羅道の主とされているのが現状だ。

 さて、そのアースラだが、今こうして桟橋の上で煙草を吸っていることなど、誰が想像できただろうか。いやね、自分でも想像したこともなかったんだけど。

 俺は、まあ散々説明してた、くだんの「アースラ」の一番最初の一人だ。アスラって呼ばれている。
 昔は結構色々なことでヤンチャしてたもんだが、今は天部という職にありついてそこで細々と贖罪をしつつも働いていたんだが……。
 先日、ヤンチャしてた頃の血が騒いじまってね、どうも。
 上司がデスクに腰掛けようとしていたところをつい、イタズラ心が騒いでな。椅子を、タイミングよく引いてしまったんだ。

 という、とてもくだらない理由で外界に飛ばされた。出張という名目だが、事実上の左遷である。
 インド神話ではヴィシュヌと呼ばれている……毘紐天というやつが時々やってる仕事なんだが、小さな案件は、あいつはやりたがらない。よって、そのしわ寄せの小さな仕事をやれと命じられてきたわけだ。
 今の俺は、誰がどう見ても普通の人間、そのはずだ。特に変な目で見られたりはしておらず、横を通る人達も何事もなく普通に通りすぎている。職業柄、人目には敏感になっちまうんだよな、どうも。この「普通」ってのが中々ない。今はありがたいかぎりだ。

 さてヴィシュヌは「人を救う」ということがお仕事なんだが、あいつは大掛かりなことしかやりたがらない。巨悪を退治する……、今どきの子にいうなら、ラスボスを退治する主人公のような立ち回り、といえばいいか? そういう、目立つ英雄的なことしかやりたがらない。

 だから、今回の俺の命じられた「うちのたまちゃんを探して」なんて小さな願い事、叶えるわけがないんだわ。

 俺は煙草を踏み消した。一応、探偵業をやっているようなフリができる小細工は、上のほうでやってある。そして、仕事を勝手に受けてある。細かい嫌がらせが得意なのは、もう長年の付き合いからわかっていたことだ。
 こっちがやったこともやったことだがな。仕返しに手かけすぎだろ。

 というわけで、俺は一枚の写真をもとに、タマちゃんとやらを探しているわけだが……。
「おじちゃん」
 ふいに声をかけられた。俺の腰くらいまでしか身の丈のない少女だ。
「たまちゃん、はやく」
 そして、この子が、飼い主で依頼人なのだ。
「あ、ああ」
 気のない返事をする。
 対して俺はやる気がないが、この娘は心配でたまらないらしく、俺のコートを掴んで離さない。俺の私物じゃないから構わないが、これ、ゼッタイシワになるだろうよ。
「……」
 流石に沈黙が痛くなってきたので、捜索を開始した。


 日が暮れるまで、捜索は続いた。
 いろんな樹木の影、物陰、箱のなか、役所の張り出し、全て確認した……確認できる範囲は。
 それでも、たまちゃんは見つかることはなかった。
「おい、嬢ちゃん、そろそろおうちに帰れ」
 大人同伴だからと、両親も放任主義すぎるのではないだろうか。
「やだ……」
 眠い、といわんばかりに目をこする。
 ああ、めんどくせえ。
 俺は、少女の頭を乱暴になでた。
「大丈夫だ、また明日も探そう」
「やくそく?」
「ああ、約束だ」
 本当なら、この娘が気が済めば、それで終わりのはずの仕事だったが。
 ……まあ、もうちょっとくらいなら、付きあってやってもいい。
 この温かい手のぬくもりには、そのくらいの価値があるように、俺には思えたのだった。




※この作品は資料を確認する余裕がなかったために適当な記述が多くあります、うろ覚えです
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