お題:生かされた運命 制限時間:15分 読者:621 人 文字数:1608字

[ファンタジー]宵闇の愚者
[ジャンル:ファンタジー?]

 生きている人間が、生き残った人間がするべきこととはなんだろうか。
 僕は、焼け野原の中心に立ち尽くして考えた。


 僕は、よくある田舎の村で育った。
 そうして、近所の森に住む賢女のおばあさんに、薬草の知識やここいらの歴史、昔話や教訓などを教わり、動物たちの縄張りや特性などを教わり、その後継者にならんばかりにそれを学習していた。
 正しい後継者で、おばあさんの孫である少女、ミラは僕と親しくなっていた。
 最初は、おばあさんをとられることに反感を感じていた彼女だったが、次第に僕と打ち解け、お互いに知識を深め合う仲間になっていったのだ。

 戦火というものは、本当に突然襲ってくるものなのだな、と、僕は、何もつかめぬ非力な腕を睨めつけながら思う。
 今や、おしゃべり好きだったおばさんや、おまけをよく付けてくれた雑貨屋のおじさんも、誰もが動いてはいない。
 無遠慮な兵たちの放った弓があちこちに刺さり、家や小屋は燃えていた。
 悲鳴、鳴き声、そんなものがあたりに満ちている。

 僕は、何もできなかった。
 何も、知らなかった。

 魔女狩りなんて法令も、彼女たちがそれに該当することも、兵が今日来ることも……。
 そうして、彼女たちが、それを知っていたことも!

 僕はこの日、おばあさんから大量の薬草採りを頼まれた。
 いいよ、と引き受けたものの、この量はおかしいとすぐにピンときた。
 それに、採集場所がやたら遠いものばかりを選んでいるような、そんな気がした。いつもは、こんな組み合わせでとらない。炎症に効く薬が作りたいのなら、そのたぐいの薬草ばかりを頼むはずが、なんだか今日は種類も何もかもがバラバラなのだ。
 唯一の共通点は、「普段、採取している場所が遠いこと」なくらいだった。
「ミラ、一緒に行こう」
 僕が誘うと、ミラは曖昧に笑った。
 いつもは快活で、竹を割ったかのような性格の彼女であったから、僕は困惑した。
「どうしたの?」
 体調でも悪いかのようだった。
「ううん、ただ、私はおばあさんと一緒に、お薬を調合しなくっちゃいけないからね。あんた、いっておいでよ。男なんだから、一人で大丈夫でしょ」
 そして、ぽんと背中を、やや強く叩いたのだった。


 戻ってきたら、この惨状だった。
 ミラとおばあさんは、森の家にいなかった。
 村にいっているのかとおもって訪ねてみたら、こんなことになっていたのだ。
 何故、どうして。
 途方に暮れている僕は、手紙を抱きしめた。
 森の、彼女たちの家においてあった手紙だった。

 魔女狩りのこと、一家郎党皆殺しであること、僕は関係ないから逃したかったこと、村を巻き込まないように自分たちだけで名乗り出るようにする、など……、詳しいことを書いてあった。
 生き残った村の人曰く、真っ先に……二人は、鋭い槍に貫かれて、倒れて……それきり動かなくなったのだという。
 僕は、懸命に救助にあたった。
 ミラが言っていたとおり、というわけではないが……家には、大量の薬がまだあった。
 僕に与えられた役目なのだと言わんばかりに、僕は何も考えず、ひたすら手当をした。

 夜が来た。
 宵闇は、僕の心を蝕んだ。
 何故、助かってしまったのか。
 僕だけ何故おいていってしまったのか。
 僕にとって、二人は家族も同然だった。親無しであった僕には、二人は、何にも代えがたい存在であったのに。

 そして、残された手紙を再度見た。
 ……気付かなかったが、二枚目があることに、今気づいた。
 ぱさりとめくると、月夜の下、こう書いてあるのが読めた。

「行きなさい、生き続けなさい。あたしたちのぶんまで、人生楽しんでよ。それが貴方の義務だから」

 僕は、手紙を抱きしめて、泣くことしか出来なかった。
 今は、ソレ以外、出来そうもなかった。
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