お題:いわゆる悪魔 制限時間:15分 読者:528 人 文字数:1656字

[現代]悪魔
ジャンル:現代

 さて、私の目の前にいるものはなんであろうか。
 ……小学生の頃から、おまじないなどには興味があり、すきあらばそういったことにチャレンジしてきていた私だ、消しゴムに願い事を書いて使い切るとか、小指に赤いマニキュアをぬって一週間はがれなければ想い人と両思いになれる、だとか。
 だが、流石に目の前の光景は信じがたかった。

 烏の塗れ羽色、といえばいいのだろうか。
 漆黒の翼を背中にもつ彼(恐らく)は、私の部屋の窓の外のベランダに腰掛け、優雅に月を眺めていたのだ。
 後ろ姿しか見えないため、性別も疑問形だったが、骨格からして恐らくそうだろう。
 そして、若い男の人だということも想像できた。
 ユニクロのシャツにデニムという、非常にシンプルながらも若者らしい格好をしていたからだ。後ろのポケットに突っ込んである財布からはウォレットチェーンまで見える。

 ずっと、このよくわからない事態に困惑しているわけにもいかないので、何か行動を起こしてみることにした。
 女子高生の部屋のなかが見えるこんな位置で、若い男がいることなど、大事だ、少なくとも私にとっては。

 思い切って、ガララと窓を開けてみた。
 物音に、彼はびくりとして身を縮こまらせた。どうやら見た目ほど、タフではないようなそんな印象を受けた。どちらかというと小動物みたいな雰囲気を感じる。
 ずっと何かに、怯えているような。
「な、なんだお前は」
 想像していたより低い声に弱々しく聞かれ、私は強く反論した。
「こっちが聞きたいわ、うちの敷地なんですけど。というか、通報するわよ」
「は、はん、警察なんて怖くあるものか」
 そして、背中を誇示してくる。
「お前にはこれが見えないのか、この節穴女!」
「見えてるけどコスプレにしか見えません」
 すんなり即答すると、彼は怒りを露わにしたように、翼を動かした。
 あら、動くの。
「ふはは、驚いたか!」
「うん、そんなに自慢していることに。羽を動かすなんて鳥でも出来るわ」
「う、ぐぐ……、俺様は悪魔だぞ!」
「そうですか。では勉学のジャマになりますので出て行っていただけませんか」
 すると、男は、雰囲気を仕切りなおすように一つセキをした。
 そうして、偉そうにこういうのだ。
「俺と契約しろ、人間の女。魂と引き換えになんでも願いを……」
 ピシャン。
 窓は小気味よい音を立てて閉まり、私はそれにさらに施錠をして、さっさと今日の復習にとりかかるべく、かばんの中身を開けだした。
「待て、話終わってない、終わってないぞ!」
「新聞は間に合ってます」
「新聞の勧誘じゃない!!」
「オマケに洗剤とかタオルとか、つけられてもいらないので」
「だから違うと言っている!」
 男はやたら息巻いているが、無理に部屋には入ってこないようだった。

「お前には、望みがないのか」
 カリカリとシャーペンを動かし、ひたすら勉強に没頭する私に、自称悪魔は切り出してきた。
「好成績」
「なら、それをこの俺様にたのめ!」
「自分の力で取りたい」
 なら、他人は介在することが出来ない。
「う、うぐぐ……」
 実のところ、ここ一時間くらいで、何度も彼はそんなふうに私を勧誘してきていた。
 ……正直、ジャマ以外の何者でもない。
「どうしても魂と引き換えじゃないといけないの」
 私はようやく、彼に向き直った。みるみるうちに、彼の表情はぱっと明るくなった。7
「い、一定の供物がもらえるなら……と、契約する気になったのか?!」
「えーっとね、軽いお願いごと程度なら」

 そして、私のお願いごとに、彼は悲鳴を上げるのだった。




「あら、毎日ありがとうねえ」
 爽やかな朝、いつものように私の母が、あの自称悪魔に例をいう。
 彼は、ここいらのゴミ拾いなど、ボランティア業務に従事していた。
 ……私の持つ、銀のフォークに怯えつつ。
「いえいえ、このくらい当然ですから」
 彼は私のほうを見て睨むのだった。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:芽衣実は自由だァァァァ! お題:いわゆる悪魔 制限時間:30分 読者:213 人 文字数:935字
にこにこ笑顔の皆から愛される人。それが彼だ。女の子からの人気はもちろん、男子からの人気さえ拐っていくような彼は私の幼馴染み。「かっこいいよねー!」なんて、聞きあ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:いわゆる悪魔 必須要素:パーカー 制限時間:15分 読者:78 人 文字数:332字
俺は今パーカーを着ている。寒いからではない。むしろ暑い。なぜなら今は夏だからだ。ではなぜ俺がパーカーを着ているかというと、このパーカーはおそらく一生ぬげないから 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:いわゆる悪魔 必須要素:ポテトチップス 制限時間:30分 読者:318 人 文字数:1257字
なんだか暇だなあと思って黒魔術に手を出してみたはいいものの、いざ目の前に悪魔を呼び出してみると、やり遂げたという気持ちも、わくわくする気持ちもなく鬱陶しいなとい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
ミカン ※未完
作者:匿名さん お題:初めての霧雨 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:419字
ちょっとやそっと雨が降ったくらいじゃプールの授業はなくならない。ましてやこんな霧雨じゃ、僕の体温を奪っていくだけ。 八月も終わるのに、まだプールの授業は続く。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:黒尽くめの罪人 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:221字
僕は闇夜に乗じて動く。闇に埋もれるように上から下まで全部黒。コーディネートとか買う服の選択にも困らない。すべて黒だからだ。 どうせ暗いんだから色なんてどうでも 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:Ammo_June お題:うわ・・・私の年収、故郷 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:1022字
開拓時代とは、基本的にどの年代においてもおおらかな時代である。なんといっても、結果さえ出せばだれもが一夜にして億万長者になれる時代、あるいは終の棲家と安定した 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:うへへ、女祭り! 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:755字
池の傍に座り込んで餌をやっていれば誰でも人気者の気分が味わえる。水面から口を出してぱくぱくせっついてくる鯉は、我先にとほかを押しのけんばかりの勢いである。 雑 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
デコ弁当 ※未完
作者:雷藤和太郎 お題:怪しい昼 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:867字
「あ、ありがとう」 周りのクラスメイトがざわついたのも無理はない。俺の目の前には学年でもかなり目立つギャルが立っていて、その手にはクロスに包まれた弁当が提げられ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ロケット お題:怪しい昼 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:818字
前山丹波駅の東口を出て正面、ホテルニュータンバ沿いの通りを歩いて2つ目の信号を右に。少し狭い路地を進んだところのコンビニエンスストア隣に、そこはある。 気を付 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:むぢから お題:怪しい昼 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:833字
勇者、山田花子は暴虐者としても知られていた。魔物たちは山田花子によって見るも無残な目にあい、成敗されていた。その世界の悪は山田花子の名を聞けば即座に震え上がり、 〈続きを読む〉

幾山アカリの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:阿修羅探偵 制限時間:15分 読者:630 人 文字数:1678字
[ジャンル:現代?] 阿修羅という単語がある。 仏教やインド神話、様々な場所に出てくる単語だが、元来は神の一人の扱いであった。 しかし、徐々に「神に敵対するもの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:生かされた運命 制限時間:15分 読者:588 人 文字数:1608字
[ジャンル:ファンタジー?] 生きている人間が、生き残った人間がするべきこととはなんだろうか。 僕は、焼け野原の中心に立ち尽くして考えた。 僕は、よくある田舎の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:いわゆる悪魔 制限時間:15分 読者:528 人 文字数:1656字
ジャンル:現代 さて、私の目の前にいるものはなんであろうか。 ……小学生の頃から、おまじないなどには興味があり、すきあらばそういったことにチャレンジしてきていた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:純粋な夕飯 制限時間:15分 読者:837 人 文字数:1759字
ジャンル:現在 こんな異常な状況は、初めてだった。 そして、こんなにもマトモな食事は、久しぶりだった。----------------------------- 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:魅惑の冤罪 制限時間:15分 読者:694 人 文字数:1656字
ジャンル: 私は罪を侵してなどいない。 燃えるような民衆の瞳、眼差しの集まるその頂点で、私は一人、佇んでいた。 私の後ろには十字架がある。 それは私の体を縛り付 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:可愛い町 制限時間:15分 読者:1034 人 文字数:1889字
[ジャンル:ファンタジー] そこは、甘い町。 屋根はチョコレート、扉は砂糖菓子。 庭に生えている木はマシュマロで、その幹は飴でできている。 もちろんグミの実だっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:誰かのつるつる 制限時間:1時間 読者:845 人 文字数:6395字
[ジャンル:ファンタジー] 私は冒険者だ。 世界中の遺跡や魔物が棲むという危険な洞窟、様々な場所を行き来してお宝を手にしてそれを売買することを生業としている。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:君とクレジットカード 必須要素:文学フリマ 制限時間:15分 読者:760 人 文字数:1824字
[ジャンル:現代] 使っても使っても、現金がなくならない。 そんな錯覚を覚えていた。 そんなわけがないのに、私はクレジットカードというものの罠にすっかりハマって 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:思い出の雑踏 必須要素:文学フリマ 制限時間:15分 読者:845 人 文字数:1792字
[ジャンル:現代] 懐かしい思いを噛み締めながら、私は雑踏を歩く。 周りの人々は一様に、多少の差はあれどにこやかな笑顔だった。 手にわたあめを持ってはしゃぐ子供 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:今度の電撃 制限時間:15分 読者:1029 人 文字数:1656字
[ジャンル:現代] ライトノベルという単語が出来たのはいつの頃だっただろうか。 それまで小説というのは小説という単語以外は存在しておらず、コラムだとか社説だとか 〈続きを読む〉