お題:彼が愛した暴力 必須要素:ところてん 制限時間:15分 読者:264 人 文字数:1225字
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戦う男
高橋さんはファイターだ。
戦う人だ。
バトラーかもしれない。
私は陰ながら応援するしかない。

高橋さんは大柄で横方向にもそれなりに大柄な、40代の男性だ。
オフィス内の仕事なので、運動も少なめだ。
それなのに高橋さんはめちゃめちゃ喰うので、どんどん太っていっている。

お昼休み、社食で高橋さんと相席になった。
社内のアイドルと言われている私の美貌に目もくれず、高橋さんは目の前のラーメンライスセットと格闘している。
餃子付である。その上、飲み物はガムシロップを三倍いれたコーヒーだ。
高橋さんに食べ合わせなど存在せぬ。

最初はちら、ちらと見ていた私だったが、やがてその食べっぷりに目を奪われ、注文した春雨スープを食べるのを忘れてしまった。
高橋さんは、がつ、がつ、と音がしそうな勢いで、ライスをかっこんでいる。
高橋さんの一口は私の弁当半分に相当する。
途中、牽制球を投げるように突然餃子に手を伸ばす。
二個いっぺんに押し込まれる餃子は、高橋さんの口の中に押し込まれる直前無念そうに変形する。
ラーメンはおそらく飲み物だ。
ごっくんごっくん言いながら、胃袋に流し込まれていった。
ぷは、と一息ついた高橋さんの口の周りは油でベタベタだ。
まるで、人類を飲み乾した魔王のような存在感だった。
あまりの圧倒的存在感に、高橋さんの周囲数メートルは人の立ち入るを許さぬ。
とうとう、暴力的なカロリーを含有するラーメンライスセットwith餃子二皿ついでにコーヒーは、高橋さんの前に屈服した。
今日も彼の勝ちだ。

口を半開きにして見入っている私に気付くと、高橋さんは言った。

「それ、春雨かい?」
「えっ? え、ええ……。ちょっと、太ってしまったから……。」

高橋さんは満面の笑みを浮かべて言った。

「食事は、戦いだぞ! 戦う前からしょぼい敵を選んでどうする!」

がっはっは、と食堂全体に響き渡る下品な笑い声に、後方で息をのんで見守っていた女性社員たちの群れからキャア、と小さく悲鳴があがった。

「そう……ですね、でも、美味しいんですよ、これ……」
「そんなに言うなら、食べてみるか!」

そう言って高橋さんが注文したのはところてんだった。
しかも甘いやつだ。
ものの数秒で飲み込まれていった。

「食べた気がしないな! じゃあ!」

彼が立ち去ったあと、テーブルは油汚れと飛び跳ねた汁でぎとぎとだった。
食堂のおばちゃんがすっ飛んできて、ぶつぶつ言いながら雑巾で拭き始める。

ところてんじゃないし……春雨だし……。

すっかり冷えた春雨は美味しくなく、私は今回の戦いに負けた。春雨相手であっても。

もし彼の食べたところてんに含まれている食物繊維が、彼の摂取した暴力的なカロリーの吸収を阻害するようなことがあったら、私のせいだ。
そう思うと涙さえこみあげる。
どうか、食物繊維すら消化されますように。


高橋さんの戦いはこれからもつづく!!
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