お題:冷静と情熱の間にあるのは嵐 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:350 人 文字数:1218字
[削除]

under the mask
あばたもえくぼ という文句の意味が、子どもの頃分からなくて、保育園の先生に訊いた覚えがある。
今ならよく分かる。

彼女は、いつもマスクをしている。
年中、いろいろなアレルギーがあるそうだ。
春はスギ、梅雨はカビ、夏はなんたらっていうイネ科の植物、秋と冬は、風邪予防でしている。
マスクなんてもったいない。
外した先には、魅力的な大きな唇があるんだけど、
彼女はそれがコンプレックスなんだそうだ。
だから大好きな彼女の唇は、滅多に見ることすら出来ない。

「ニキビが出来たの」
「どこに?」
「あごの下……、よく出来るの、困るわ」
「もしニキビがあっても僕は君が好きだよ」
「……そうじゃないの」

僕には、彼女が分からない。

こんな話になったこともあった。

「ねえ、マスクをはずしたら?」
「いやよ。口が見えてしまうから」
「君の唇は魅力的だよ」
「でも、私はいやなの」
「どうして? 僕は好きなのに」
「……分かってないのね」

いつも、友達のような恋人のような距離感で、つかずはなれずを繰り返している。
僕が諦めようと連絡を絶つと、気まぐれなように彼女から連絡が来る。

「今から会えない?」

かといって追いかけると、ふいっと飛んでいってしまう。

「分かってないのね」


「お前それ、キープされてんだよ」
鈴木はビールの泡を飛ばしながら言う。
「そんな状態で黙ってるなんて、どうかしてるよ。諦めるか、告白するかどっちかにしろよ」
「いや、告白はもう、してるんだよ」
「で?」
「はっきりした返事もらったことないな……」
「ほら、キープされてるだけじゃねぇか」

そうなのかな。

僕はとうとう、彼女に二択を迫ることにした。

「どうしたの? 改まって」
「はっきり答えて欲しいんだ」
「なあに」
「僕の気持ちは知ってるよね。はっきり答えが欲しいんだ。そうでないなら、もう連絡をとるのはやめたい」

彼女は戸惑って目を泳がせた。
マスクに隠れて、唇の動きは分からない。

「そんな急に……、どうして?」
「どうしてってことはないよ。分かるだろう」

長い沈黙があった。彼女はカップのふちを指でなぞったり、窓の外の人の流れを見たりしていた。

「……そういえばね、また、ニキビできちゃったの」
「……」
「ほら、ここよ。おでこ。見えるでしょう?」

確かに彼女の額には、大きくて赤い目立つニキビがあった。
だけど、だから、どうだというのだろう。

「……だから? 僕は、前も言ったけど、それでも君が好きなことに変わりはない」

彼女は食い入るように僕を見つめていたが、ふっと視線を外すと、

「今日、あたし、帰るね」

と席を立って、声をかける暇もなく喫茶店を出て行ってしまった。


結局、あれからも何も変わっていない。


諦めるのと好きでいるのを繰り返すのは世界一つらいのだと僕は思う。
冷静と情熱の間にあるのは嵐だ。
この作品をツイート

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:炒飯 お題:愛すべきコメディ 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:290字
今朝からぐっと気温が下がって伏せた状態からの起き上がりが妙に気だるい。左瞼から数センチ上 ちょうど眉毛との間に出来たニキビが生活の悪さを物語っている。カーテンを 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:むぢから お題:フニャフニャの星 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:782字
フニャフニャの星は磯田家の果報であった。なんの成分で出来ているかは知らないがともかくフニャフニャとしている宝石である。そのふにゃふにゃ感は時の権力者をも虜にし、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:Ammo_June お題:フニャフニャの星 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1164字
頬にできた小さいニキビを気にしながら、私は一心不乱にトラックの向こう、陽炎に揺れるゴールを見つめる。高校生活最後の大会に向けて、毎日のように私は練習に打ち込ん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:鐘辺 完 カクヨムに『望み志望』(略称) お題:フニャフニャの星 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:708字
「はい。次のかたどうぞ」「ニキビで悩んでるんです」「お顔にはニキビはないようですが」「いいえ。ここなんですけどね」「ああ、はい。そこですか。ああ、これはすごい。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:evening お題:どこかの靴 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:64 人 文字数:1538字
小さいころ、ブーツに憧れていた。子供の履く靴といったら学校のための白い運動靴か上靴。大人が履く靴はお父さんが会社に行くときの革靴。お母さんがたまに履くようなハ 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
白い ※未完
作者:おてんば お題:白い極刑 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:108字
先月から成長し続けている邪悪なる悪魔に今日も白い極刑を与えなければならない。毎日ひたすらニベ○を塗って与えているが、邪悪なるニキビは今日も元気に成長している。え 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:西塔ゆき@宿題締切10月14日だよー お題:犬の正月 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:73 人 文字数:514字
カーテンの隙間から差し込む光の明るさに自分が寝過ごしたことを察した。念のため時刻を確認しようとケータイに手を伸ばす。そこに表示されている時間は11時37分。ああ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:イっヌ・サイケデリっコ お題:知らぬ間の冤罪 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:117 人 文字数:1045字
口笛を陽気に流して、この人の波を逆らうようにして進む。私を取り巻く時間普通の人よりも少し違うように進んでいる。朝起きて支度をして、家族の為、自分の為、社会の為に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:のら お題:人妻の冤罪 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:133 人 文字数:909字
思ったほど人間は他人に興味が無い。つまり私が昨日何を昼間に食べたのかなんて、誰も気にしない。きっとあなたも興味無い。でもこうして私の話を聞いてくれる程度には、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:のら お題:くさいお嬢様 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:156 人 文字数:1249字
「まったくお嬢様と来たら、お遊びが過ぎる」「信の芸術家と言うものは往々にしてああしたものだよ。時に勉学に励むよりも有効な時間の使い方と言う物を、若いうちにある時 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:僕の好きな流刑地 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:379字
僕の好きな流刑地、だと?はてさて、困ったものだ。S県M高校、普通入試。国語の作文問題で、「貴方の好きな流刑地について書きなさい。」といった出題がされた。こんなの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
天才未満 ※未完
作者:匿名さん お題:輝く天才 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:533字
彼女は間違いなく天才だった。 年齢の問題から“神童”という立場に甘んじてはいたが、その才能はこの先彼女の人生を喰い潰して更に輝くものだと誰もかれもが確信してい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:夜の復讐 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:454字
闇に忍び影に生きる。我ら忍びの者なりーー。「にいちゃーん、少し早くない?」目の前を颯爽と、かつ軽快に進む兄を前に私は後ろを追いかけるので精一杯だ。「何を言ってる 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:地獄の負傷 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:328字
「最近の人間は弱ええな。すぐに弱音を吐く」 重苦しくため息を吐いた鬼はぎろり、と足元の人間を見た。まだまだ、地獄にいる罪の清算を背負わされた人間たちより傷の少な 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:彼と天才 制限時間:15分 読者:1 人 文字数:507字
A「ひと工夫あるカフェ?入ってみよ」B「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」A「あぁ確かに店の雰囲気にひとくふうあるわぁ」A「あ、椅子もひと工夫あってすわりや 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:未来のぺろぺろ 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:686字
ぺろり。 とろけ落ちるアイスクリームを舐め取る。8月も後半、夏休みもそろそろ終わりを告げる。今年の夏は毎日アイスを食べていたくらいで、出かけることもなく、友達と 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:空前絶後の秋 制限時間:1時間 読者:3 人 文字数:400字
「今日から二学期ですが、皆さまには言わなければならないことがあります」 聞いているか信じがたい全校生徒の前で、演説のように男の校長が話している。「私以外の先生方 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:とびだせ借金 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:646字
皆さんはあの国民的ゲーム「とびだせどうぶつの森」を知っていますか?今回はそんな可愛いゲームではなく、ちょっと怖いゲームのお話をします。とある女子高校生のお話です 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:静かな小説練習 必須要素:マクガフィン 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:443字
必須要素:マクガフィンどういう意味だろうか。小説の勉強などしたことがなく自由気ままに駄作を書き続けていた私にはまったく意味の分からない言葉だった。残り時間15分 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:暗黒の朝日 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:671字
雀だろうか。 心を浮き立たせるような可愛らしい囀り声が朝の訪れを告げている。 カーテンが吊られていない窓辺からは暖かみを感じさせる橙色の光が差し込んでいる。 〈続きを読む〉