お題:冷静と情熱の間にあるのは嵐 必須要素:ニキビ 制限時間:15分 読者:334 人 文字数:1218字
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under the mask
あばたもえくぼ という文句の意味が、子どもの頃分からなくて、保育園の先生に訊いた覚えがある。
今ならよく分かる。

彼女は、いつもマスクをしている。
年中、いろいろなアレルギーがあるそうだ。
春はスギ、梅雨はカビ、夏はなんたらっていうイネ科の植物、秋と冬は、風邪予防でしている。
マスクなんてもったいない。
外した先には、魅力的な大きな唇があるんだけど、
彼女はそれがコンプレックスなんだそうだ。
だから大好きな彼女の唇は、滅多に見ることすら出来ない。

「ニキビが出来たの」
「どこに?」
「あごの下……、よく出来るの、困るわ」
「もしニキビがあっても僕は君が好きだよ」
「……そうじゃないの」

僕には、彼女が分からない。

こんな話になったこともあった。

「ねえ、マスクをはずしたら?」
「いやよ。口が見えてしまうから」
「君の唇は魅力的だよ」
「でも、私はいやなの」
「どうして? 僕は好きなのに」
「……分かってないのね」

いつも、友達のような恋人のような距離感で、つかずはなれずを繰り返している。
僕が諦めようと連絡を絶つと、気まぐれなように彼女から連絡が来る。

「今から会えない?」

かといって追いかけると、ふいっと飛んでいってしまう。

「分かってないのね」


「お前それ、キープされてんだよ」
鈴木はビールの泡を飛ばしながら言う。
「そんな状態で黙ってるなんて、どうかしてるよ。諦めるか、告白するかどっちかにしろよ」
「いや、告白はもう、してるんだよ」
「で?」
「はっきりした返事もらったことないな……」
「ほら、キープされてるだけじゃねぇか」

そうなのかな。

僕はとうとう、彼女に二択を迫ることにした。

「どうしたの? 改まって」
「はっきり答えて欲しいんだ」
「なあに」
「僕の気持ちは知ってるよね。はっきり答えが欲しいんだ。そうでないなら、もう連絡をとるのはやめたい」

彼女は戸惑って目を泳がせた。
マスクに隠れて、唇の動きは分からない。

「そんな急に……、どうして?」
「どうしてってことはないよ。分かるだろう」

長い沈黙があった。彼女はカップのふちを指でなぞったり、窓の外の人の流れを見たりしていた。

「……そういえばね、また、ニキビできちゃったの」
「……」
「ほら、ここよ。おでこ。見えるでしょう?」

確かに彼女の額には、大きくて赤い目立つニキビがあった。
だけど、だから、どうだというのだろう。

「……だから? 僕は、前も言ったけど、それでも君が好きなことに変わりはない」

彼女は食い入るように僕を見つめていたが、ふっと視線を外すと、

「今日、あたし、帰るね」

と席を立って、声をかける暇もなく喫茶店を出て行ってしまった。


結局、あれからも何も変わっていない。


諦めるのと好きでいるのを繰り返すのは世界一つらいのだと僕は思う。
冷静と情熱の間にあるのは嵐だ。
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