お題:ドイツ式のバラン 必須要素:レモン 制限時間:15分 読者:304 人 文字数:1132字
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彼女のレモン
みんなで頼んだ唐揚げに、平気でレモンをかけてしまうような英子。
いつも怒るのは佐緒里。
一人一人が自分の取り皿にとって、そのとき必要ならレモンをかけたらいいじゃない、と怒る。
でも、結局みんなかけるんだから、こっちのほうが合理的じゃない、と英子はしれっと言う。
私は可笑しくって、笑ってしまう。

ねぇねぇ、と、待ち合わせ場所に意気込んで駆けて来た英子。
これ、オシャレじゃない?
それは、緑色の折り紙で折られたペーパークラフトだった。

「これ……、何?」
「やだぁ、蘭よ、蘭。見てわかるでしょ?」
「笹かと思った」
「そう言われると笹船みたい」
「もー、やだ、二人とも! アートの感性ないんだから!」
「どうしたのこれ」
「ドイツ人の彼氏がね、あたしのためにって」

うっとりと遠くを見る英子は、このあとひどい振られ方をした。
いつも、そうだ。
英子はいつもすぐに誰かを好きになって、すぐに振られてしまう。
大好きな大好きな人だから、どんなにひどいことを言われても我慢してしまって、結局、何もかもがめちゃくちゃになる。

どうして?
私たちといるときは、あんなにわがまま、やりたい放題な彼女なのに。
好きな人の前では、萎れた薔薇みたいに大人しくなっちゃうんだね。

いつも英子が夜中に大泣きしながら電話してきて、
佐緒里が怒りながら説教して、私がなだめて、最後は三人で「男なんて要らない会」を結成して終わった。
二週間くらいでまた、新しい恋を見つけてきちゃうんだけどね。

そんな英子が妊娠して、結婚すると言う。
もちろんおめでたいんだけど、私と佐緒里は心配だ。

「大丈夫なの? 言いたくないけど……、信用できる人?」
「だーいじょうぶだって、二人ともやだぁ、心配性!」

うそみたいにきらきらの笑顔。

今日、結婚式だった。
英子は綺麗だった。
月並みな言葉だけど、
ほんとうに今までで一番きれいだった。
ちゃんと愛されていた、みんなから祝福されていた。

ちゃんと愛し合っている二人は、あんなにも輝いているんだって私は初めて知った。
英子のあんな穏やかな笑顔、初めて見た。
知らない人みたいだ。

良かった、ほんとうに。

帰り道、私と佐緒里は肩を抱き合って泣いた。

「英子、ほんと、良かった」
「うん」
「泣きわめいて、顔ぐしゃぐしゃにして、嫉妬に狂って、男なんて要らないって言ってた英子は、もう居ないんだね」
「居なくなったよ」
「もう、夜中電話かけてこないだろうね」
「そう思う。もうお母さんみたいな顔だもん」
「一人で大丈夫そうだね」
「良かった」

二人でふらふら、千鳥足。

私たちが大好きだった泣き虫英子は、もう居ない。
でもそれでいい。
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