お題:楽しい遭難 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:386 人 文字数:1045字
[削除]

I have the time.
あるところに、健康に生きるのが何より好きな女の子がいた。

ミコリの新しいお父さんは、ミコリに何もくれなかった。
パンも、スープも、自由な時間もくれなかった。
朝起きると今日一日でやらなくてはいけないことだけを言い渡されて、
それが、新しいお父さんがミコリに唯一くれるものだった。

今日は、海辺の、先の先のもっと先にある崖の上に住んでいる漁師のおじいさんに、
固く焼いた塩辛いパンのかわりにいくらかの魚を分けてもらうのが
ミコリの役目だった。
これは、少し良いほう。
一日中薪と格闘するよりは、よっぽどいい。

海辺はこの時期びゅんびゅんと風が吹き荒れていて、ミコリのぼさぼさの三つ編みをもっとぼさぼさにした。
何度かバスケットに入ったパンが飛んでいってしまったので、
なくさないようにスカートの中にしまった。

もうとっくに着く頃の時間なのに、おじいさんの家はいつまでも見えなかった。
水平線に赤い太陽が沈む。
ミコリは、前にも後ろにも戻れなくなってしまったと気付いた。

ひどくお腹が空いた。
スカートの中にはパンがあったけれど、これを食べたらお父さんがどれだけ怒るかを考えると、とても食べる気にはなれなかった。
ミコリは、海辺に流れ着いた海藻を少し齧ってみた。
塩辛いだけで、とても食べられそうもなかった。

少しは風がマシだと思って、大岩の影で、ミコリは体を丸くしてしゃがみこんだ。
夜になっていく。
明日が来るとはとても思えない暗さと寒さだった。
ミコリはなんとなく、このまま自分が死んでしまうのだと確信した。

お母さまが死んだときも、お父さまが死んだときも、神様に祈ったけれどどうにもならなかった。
だからミコリはそれ以来、何かを祈るのをやめてしまった。
新しいお父さんもいつか死んでしまうのだから、それを楽しみにすることにした。
その前に自分が死ぬのは悔しい気がした。

暖かさに気が付いた。
ミコリは、夜釣りにやってきた漁師のおじいさんに助けられ、暖炉のある暖かい部屋に寝かされていた。

「おじいさん、海藻って美味しくないのね。わたし、齧ったけれど、固くて塩辛いだけ。……それって、うちのパンとおんなしなんだけど」

おじいさんは笑った。

「食べ方を工夫すれば美味しいんだよ。ほら、この海苔入りのバンズなんか栄養満点さ」

「長生きするのなら、食べるわ」

ミコリは、今日も新しいお父さんに言い渡されたことをして、新しいお父さんがミコリより早く死ぬことを待っている。
この作品をツイート

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:ゆうき しろう(P.N) お題:楽しい遭難 制限時間:15分 読者:157 人 文字数:305字
裕福な人間にとって食品とは、栄養補給か空腹感を解消する為に食べるだけの物だ。娯楽の一つとも言える。だが今は違う。遭難しているのだからそうなって当然だ。 遭難し 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ソルトコ お題:楽しい遭難 制限時間:15分 読者:262 人 文字数:503字
にっこり笑って、幸せそうに。僕らは雪山に閉じ込められていた。 まあ理由も目的も簡単な話、所謂自殺オフという奴だからだ。 ここで素っ裸になって死ぬのも一考だと思 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:鐘辺 完 お題:最強の恋 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:87 人 文字数:1152字
組織の幹部に恋をしてしまった怪人。「やめといたほうがいいですよ」 戦闘員にさえ止められる。 彼は20年以上前から禁忌とされている作戦を実施しようとしていた。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:須賀夕純☃マイペース創作屋 お題:マンネリな教室 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:85 人 文字数:878字
静かにざわめいている。賑やかに淡々としている。 昨日と何が違うかと問われて答えられるもののいない光景が十年一日のごとくそこにある。見える人影はときに灰色に透け 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:見憶えのある音楽 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:238 人 文字数:1124字
この話のタイトルで話を書くにあたり、「大丈夫なの?これ、こんなことして大丈夫なの?私訴えられたりするの?大丈夫なの?心弱子なのに大丈夫なの?削除されたりして、管 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:潮音@ドールオーナー兼創作家スランプ中 お題:頭の中の雨 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:161 人 文字数:244字
頭の中で雨が降ってる。朝食を食べながらぼんやり窓の外を見たがうんざりするほどの晴天だ。だが僕の頭の中では雨が降り続いている。ザーザーと雨の音も頬に風が当たる感触 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:のら お題:初めての幻想 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:165 人 文字数:1735字
苦心はしましたよ? もちろん計画性なんて皆無。でも地道な努力が実るって事も有るじゃないと言う幻想にひたむきに向き合ってこうなっているわけだから、もうちょっと生 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ゆいち お題:茶色い栄光 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:149 人 文字数:1081字
その茶色き者、汚辱に塗れた衣を纏いて、金色の野に降り立たん。 そうは言っても、勇者は好きで糞まみれな人生を送ってきたわけではない。体質だ。遺伝だ。家系なのだ。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:のら お題:ドイツ式の笑い声 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:261 人 文字数:1258字
「ああ、海苔うめぇ~~~~。もう白い飯に海苔があれば朝ごはんとしてこれ以上完璧なものは無いね」 独りで言って見ても誰が反応してくれると言う訳でもない。虚しい行為 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:のろみの お題:わたしの嫌いなこだわり 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:257 人 文字数:754字
わたしの友達にみきちゃんという女の子がいる。みきちゃんは可愛くて優しくてスタイルが良くて歌がうまくてとても可愛い。でも、彼女はいつもコンビニのおにぎりの海苔を巻 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:初めての勝利 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:662字
じゃんけんにどうしても勝てない。じゃんけんがめちゃくちゃ弱い。負けた記憶しかないので、いつだって手に入れたいものを手にできず辛酸を舐める日々だった。「僕、じゃ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:青い魔物 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:281字
「青い魔物…」彼女、レイラは困っていた。聞いたこともない。 「ねーねーミミー!」「何」ミミは私の大切な仲間だ。「青い魔物ってなーに?」「『ロッドスミッド』」「… 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:愛と死の経験 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:588字
死んだ人間を見たことがあるか?と、セキが言った。俺の両親は葬式の手配でバタバタしているので、今、この部屋には俺とセキの二人しかいない。正確にはもう一人、俺の兄 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:ワイルドな自動車 必須要素:ラストで死ぬ 制限時間:1時間 読者:6 人 文字数:2385字
ここのところ雨が続いたせいで飯田川は濁々として風情の欠片もない。草木の芽吹くまでしん、と静まり返って、雄大さを含みながらただ止まったように流れるあの姿が最早懐 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:自分の中の凶器 制限時間:30分 読者:10 人 文字数:602字
――――人は誰でも、心に闇を持っている。これはよく聞く言葉である。では、人は誰でも、心に凶器を持っているとしたら?自分の中に無意識のうちに凶器を忍ばせているとし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:自分の中の凶器 制限時間:30分 読者:11 人 文字数:631字
自分の放つ言葉に人を操る力があると気づいたのは最近のことだ。感情が高ぶった状態で誰かと話すと自分の言ったようにその人が動くことがしょっちゅうだった。どうやら私 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:名付けるならばそれは娼婦 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:740字
雨下する焼夷弾に侵されることなく、青空は終戦を迎えた。 だけど、ぼくのちょっとした思い出に、戦争はちいさな傷痕をつけた。 その日、ぼくはいつものように畑で野良 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:君と夏 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:255字
「夏って、あっついけど、」そう、当たり前なことを言い、次の言葉を紡ごうとしている君の横顔は涼しげだった。「私は好き」え、俺のこと?いや、話の流れから夏か。「でも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:栄光の能力者 必須要素:400字以内 制限時間:1時間 読者:21 人 文字数:1061字
あるところに、天才的なピアニストの青年がいた。彼の演奏は素晴らしかった。コンクールでは、楽典に基づいた正確無比な奏法で採点者を唸らせた。コンサートでは、独自の解 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:限りなく透明に近い博物館 必須要素:九州 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:993字
九州のとある博物館が非常に困っていると、親戚の叔父から聞いた。 展示されている作品は珍しいものばかりで、学術的価値は十分であるという。ただ、建築家のアイディア 〈続きを読む〉