お題:楽しい遭難 必須要素:海苔 制限時間:15分 読者:442 人 文字数:1045字
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I have the time.
あるところに、健康に生きるのが何より好きな女の子がいた。

ミコリの新しいお父さんは、ミコリに何もくれなかった。
パンも、スープも、自由な時間もくれなかった。
朝起きると今日一日でやらなくてはいけないことだけを言い渡されて、
それが、新しいお父さんがミコリに唯一くれるものだった。

今日は、海辺の、先の先のもっと先にある崖の上に住んでいる漁師のおじいさんに、
固く焼いた塩辛いパンのかわりにいくらかの魚を分けてもらうのが
ミコリの役目だった。
これは、少し良いほう。
一日中薪と格闘するよりは、よっぽどいい。

海辺はこの時期びゅんびゅんと風が吹き荒れていて、ミコリのぼさぼさの三つ編みをもっとぼさぼさにした。
何度かバスケットに入ったパンが飛んでいってしまったので、
なくさないようにスカートの中にしまった。

もうとっくに着く頃の時間なのに、おじいさんの家はいつまでも見えなかった。
水平線に赤い太陽が沈む。
ミコリは、前にも後ろにも戻れなくなってしまったと気付いた。

ひどくお腹が空いた。
スカートの中にはパンがあったけれど、これを食べたらお父さんがどれだけ怒るかを考えると、とても食べる気にはなれなかった。
ミコリは、海辺に流れ着いた海藻を少し齧ってみた。
塩辛いだけで、とても食べられそうもなかった。

少しは風がマシだと思って、大岩の影で、ミコリは体を丸くしてしゃがみこんだ。
夜になっていく。
明日が来るとはとても思えない暗さと寒さだった。
ミコリはなんとなく、このまま自分が死んでしまうのだと確信した。

お母さまが死んだときも、お父さまが死んだときも、神様に祈ったけれどどうにもならなかった。
だからミコリはそれ以来、何かを祈るのをやめてしまった。
新しいお父さんもいつか死んでしまうのだから、それを楽しみにすることにした。
その前に自分が死ぬのは悔しい気がした。

暖かさに気が付いた。
ミコリは、夜釣りにやってきた漁師のおじいさんに助けられ、暖炉のある暖かい部屋に寝かされていた。

「おじいさん、海藻って美味しくないのね。わたし、齧ったけれど、固くて塩辛いだけ。……それって、うちのパンとおんなしなんだけど」

おじいさんは笑った。

「食べ方を工夫すれば美味しいんだよ。ほら、この海苔入りのバンズなんか栄養満点さ」

「長生きするのなら、食べるわ」

ミコリは、今日も新しいお父さんに言い渡されたことをして、新しいお父さんがミコリより早く死ぬことを待っている。
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