お題:ぐふふ、虫 制限時間:15分 読者:288 人 文字数:866字

その笑い声を描写するとしたら、たぶん、



 教室の後ろ側はちょっとした密林になっていた。
 もしかしたら、一般的な小学校の教室風景とは若干違うのかもしれない。なにせ僕は別の小学校に通った経験がないから自信がない。少しは共通点もあるんじゃないかなと思っている。
 石灰の粉でくすんだような黒板がある。そして格子状の木製棚。色調を統一したランドセルがいっぱい詰まってる。もちろん棚からはそれぞれに熱帯の若木たちが芽を伸ばし、元気よく天井につっかえては文句を言っていた。
 それから、生物係が受け持つ小さな生きものたち。これはクラスによって違う。
 金魚だとか、セキセイインコだとか、ミズクラゲだとか。蝶に特化したクラスは、棚という棚にモンシロチョウやオオカバマダラやオオムラサキの幼虫を飼っていて、ランドセルを入れるスペースが足りなくなっているらしい。彼らはみんな当たり前のように羽化して、幸せそうに密林を飛び、来年の二年生のために子供たちを産みつけてくれる。
 
 さて僕らのクラスでは、二学期から虫の鳴き声がブームになっていた。みんな夏休みの間にアブラゼミからクマゼミからツクツクボウシまで蝉の合唱に溺れすぎて、静寂に耐えきれなくなったんだろう。鳴き声を持つ虫ならなんでも良い、クラスの誰もが片っ端から捕まえては教室に連れてきて、僕らの背後に広がる密林に放した。カゴに入れておくなんて考えられなかった、虫たちは進んで密林に住み着いたし、わざわざ教室にまで足を延ばす奴はいなかった。

 コオロギ、スズムシ、そして四種以上のバッタたち、秋を追うごとに鳴き声の層は深まり、先生は授業のたびにいちいち怒鳴らなくては何にも聞こえなくなってしまった。けれど冬が近づくにつれ鳴き声は少しずつ薄まっていった。その頃には僕らも沈黙への慣れを取り戻りつつあった。

 ただ、冬になったのに、枯れかけた密林からはいつまでもいつまでも虫の声がする。何の虫か誰にも分からない。

 笑っているんだ。













MEMO

さてどうしてくれようか

虫の鳴き声にしよう


作者にコメント

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