お題:女の人間 制限時間:2時間 読者:339 人 文字数:778字

雨空にそう願う。
「この前の雨の日、僕は森で人間の女が罠に引っかかっていたのを助けました。

 人間の女は僕らと違って体毛がなく、尻尾も生えていません。最初に近づいた時は大声で叫びながら物を投げてきましたが、罠を外したら泣き止みました。でもこちらが怖いのか、暫くじっと睨んだまま何もいいません。言葉が通じないのかと思い話しかけると、大層驚いた表情で、言葉が通じるのかと返事をしました。

 僕は人間の女を怖がらせたことを謝って、自分の家に彼女を招きました。人間の女は罠で足を怪我していたので、僕は消毒液とガーゼと包帯を持ってきて、綺麗に巻いてやりました。人間の女はありがとうと一言言いました。少し無愛想だと僕は思いました。雨がやんだので、人間の女は森に帰りたがっていました。それに僕は気付いて、ドアを開いてやると人間の女はすぐに走って森に帰りました。」

「素晴らしい作文でした。お子さんは中々文才が有りますね」
 湿った鼻を舐めながら、先生は息子の書いた作文についてそう褒めてくれた。私個人としては、あまり人間との交流は避けて欲しいのだが、このように息子を褒めて貰えた事は単純に嬉しい事だった。ただ今回は人間の中でも凶暴性の低い女だったから良かったが、もしこれが凶暴な男だったらとぞっとする。これからはあまり息子を一人にしないよう、母さんにきつく言っておくべきか。

 私は先生にお礼をいって、小学校を後にした。今日は息子の作文と同じように、細やかな雨が降り注いでいる。道に出来た大きな水たまりが鏡のように私の姿を映し出す。そこにはくたびれた一匹の中年オオカミの姿が写っていた。オオカミと人間は大きく違う。それを理解するには息子はまだ幼すぎる。しかしだからこそ、今はその優しさを失わないで欲しい。優しく有るには違いを知りすぎた中年オオカミは、只々雨空にそう願うのである。 
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:女の人間 制限時間:2時間 読者:312 人 文字数:3541字
トイレの洗面台から私が離れることができたのは、入ってから3時間も経った頃だった。結局さんざん下地からやり直したあとで、化粧はいつもどおりの組み合わせ。軽く舌打 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:矢野 お題:女の人間 必須要素:桃太郎のストーリーを自分流にアレンジ 制限時間:15分 読者:204 人 文字数:660字
一人の老婆が川にて洗濯をしていると今まで見たことの無いような大きな桃のような物体が上流のほうから流れてきた。老婆は気になりそのあたりに落ちている木の棒を手に取り 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:木十林二森 お題:フニャフニャの音 制限時間:2時間 読者:6 人 文字数:1630字
奇妙な道があった。別段曲がりくねっているとか、地面がおかしいとか、そういうわけではない。人通りが多いような住宅街にあるわけでも、商店街にあるわけでもない。むしろ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:2つの神話 制限時間:2時間 読者:17 人 文字数:2519字
それはきっと間違いだったのだろう。永く続く戦争がもたらした、いびつな歪み…それでも、この気持ちに嘘はないと思っている。そうして僕は彼女の手を取り、昏く輝くゲート 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:スポーツの尿 制限時間:2時間 読者:13 人 文字数:2483字
競技祭を三日後に控えた海辺の街は沸き立っていた。観客らしい者たちや、出場者と見える屈強な男たちが、検問を突破して次々と門を潜ってゆく。 競技祭は、四年に一度行 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:くのう(貼るタイプ) お題:熱いもこもこ 制限時間:2時間 読者:17 人 文字数:3376字
気が付くと辺り一面はすべて赤色に染まっていた。熱い、呼吸をするたび、不愉快なくらいに熱気を帯びた空気が喉を通りぬける。口の中はカラカラだ。さっきまで汗にまみれて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:記憶の経験 制限時間:2時間 読者:12 人 文字数:176字
記憶を手繰り寄せるように、頭の中をかき混ぜる。今まで辿ってきた道のりが遥か遠くに感じた。と、そこで、視界に光が降り注いだ。閉じていた目を開けた。たったそれだけの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ころね お題:愛すべき口 制限時間:2時間 読者:22 人 文字数:398字
佐々木はなんでも食べた好き嫌いをしないで食べた大人達が褒めてくれた佐々木は喜んだ佐々木はなんでも食べた嫌いなものを代わりに食べた友達が感謝してくれた佐々木は喜ん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:猫目石[DEAD] お題:つまらない女 制限時間:2時間 読者:21 人 文字数:4342字
病院の屋上の柵に腰掛け、未だ帰ってこない彼を待つ。「つまらない女」そう言って彼は自分を見捨てた。高校生の時に付き合い始めた彼。最初は遊びだと思っていた。けれども 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:サルモンキー お題:禁断の風 制限時間:2時間 読者:22 人 文字数:4526字
回転寿司屋のアルバイトがきっかけで、君とぼくとは出会った。初めて君の姿を見た時、ぼくは「なんて地味な女性なんだろう……」と思ったのを今でもよく覚えている。よれ 〈続きを読む〉

伊織千景の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:不幸な私 必須要素:大統領 制限時間:2時間 読者:276 人 文字数:1376字
上質なゴートファーラグの絨毯の上は、まるで巨大な獣の上を歩いているような錯覚を覚えさせる。 円状の室内には、トラディショナル家具ブランドの頂点、KINDELの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:来年のコメディ 必須要素:400字以内 制限時間:2時間 読者:326 人 文字数:400字
「来年のことを言うと鬼が笑うらしいですよ」「そうなのか」「来年は私、ちょっくら蜘蛛の糸でフリークライミングでもしようとおもってるんですよ」「そうなのか」「笑わな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:安全な誰か 必須要素:カレー 制限時間:2時間 読者:302 人 文字数:1798字
そろそろ前に進まないといけないと思いつつも、いつだって同じ所で堂々巡りだった。 今日だってそうだ。頭のなかでは幾つもの案が浮かんではいた。だけどそれのどれも実 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:コーヒーと感覚 必須要素:丑三つ時 制限時間:2時間 読者:306 人 文字数:1079字
研ぎ澄まされていく。刃物を研ぐように、鏡を磨くように。酒は現実を忘れさせてくれる。嫌なものから目をおおって、心地よい気持ちにしてくれる。だから嫌いだった。コーヒ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:シンプルなあの人 必須要素:時限爆弾 制限時間:2時間 読者:366 人 文字数:1525字
「いつまで泣いてるのよ」「……当たり前だ。こんな時位、泣かせてくれ」僕は、自分の声がかすれて震えるのを、どうしても止められない。怖かった。何故こんな目に自分が合 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:紅茶と計算 必須要素:バナナの皮 制限時間:1時間 読者:344 人 文字数:1374字
白一色、ロココ調の家具に囲まれ、純白のフリルのドレスに身をまとい、ロイヤルコペンハーゲンのティーカップに注がれた今日の紅茶は、フォートナムメイソンのアールグレ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:都会の死 必須要素:バツ印 制限時間:1時間 読者:303 人 文字数:991字
死はどんなものにも平等に訪れる。俺は赤錆びたその馬鹿高い鉄塔を見上げた。涙が溢れた。悲しいのではない、嬉しいのでもない。ただ、涙が出た。その鉄塔の名前は、かつて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:漆黒の闇に包まれし軽犯罪 必須要素:フォロワーの誰かを○す 制限時間:2時間 読者:318 人 文字数:1371字
「あんたには、何が見える?」錆びついたパイプ椅子に座り、俺は目の前に座るくたびれた様子の中年男性にそう問いかける。答えなど求めてはいない。一方通行の言葉は行き着 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:2つの円周率 必須要素:フォロワー達が○し合い 制限時間:2時間 読者:362 人 文字数:1211字
静寂が、全てを飲み込む。数万という観客がいながら、音一つ立たない。無音のプレッシャー。つばを飲み込むことさえはばかれる緊張。観客たちの視線は、ただ一点。中央に存 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:謎の秋雨 必須要素:コーヒー牛乳 制限時間:2時間 読者:337 人 文字数:1635字
それは、雨のようだった。違うところがあるとしたら、それが赤い色をしていたことと、空からではなく、男の首から吹き出していたことくらいだろう。男は苦痛を感じるより、 〈続きを読む〉