お題:真紅の怒りをまといし凡人 制限時間:2時間 読者:321 人 文字数:1158字

燃える@市役所
 凡人は凡人なりの、身の程をわきまえた行動を取るべきだ。それが凡人たる私のモットーであり、そのお題目にしたがって日々を生きてきた。毎朝七時に目を覚まし、朝はご飯で、昼はパン、夜は日替わりで魚、肉、中華のローテーション。仕事は無難に公務員。休日はだらしなくゴロゴロと部屋で過ごす。規則正しく平凡で、見渡す限り世間並み。そんな凡人ライフを満喫していたはずの私が、今正に規格外の状況に陥っている。

 どのような状況かというと、燃えている。比喩とか言葉のアヤとかではなく、文字通り燃えている。小さめのキャンプファイヤ―規模の紅蓮の炎が、私の体を包み込むように燃え上がり、近くに置いてある市役所の備品である椅子を若干焦がし始めている。

「先輩ー早めに収めちゃってくださいねそれ。仕事にならないんで。」
 新人の山下がぞんざいな態度で嫌な顔をしてそう言うが、こちらだって困っているのだ。誰が好き好んで発火するか。私だって仕事中にこうなったものだから、仕事の書類を一つと、お気に入りだった椅子を全焼させてしまったのだ。だから私は加害者というよりどちらかと言うと被害者と言っても過言ではないはずなのだ。だからそんな目で見るな山下よ。後でコーヒーおごってやるから。

「なんだい大層燃え上がっているじゃないか。仕事に対してもそうあってほしいねえ」
 部長がまたねちっこい嫌味を投げかけてくるが、何も言い返すことが出来ず、ただ平謝りを繰り返すが、お辞儀をしたせいで部長の髪の毛に少し引火した。軽い大惨事になった。ちょっと気分が晴れて、火の強さが少し治まってきた。現在の火の強さをたとえるなら、石油ストーブ位の規模だ。

「うわー大変ですね。喉乾いてません?お水もってきましょうか?」
 市役所の聖母、佐々木さんが心配そうな顔をしてそう言ってくれた。確かにこの憤怒の炎をまとい始めてもう30分が経とうとしていて、若干のどが渇いてきている。佐々木さんナイス気配りと声を高々に叫びたいが、市役所の中なので遠慮して、普通に水を持ってきてもらうことにした。この一連の出来事が心に潤いを与えたのか、炎の強さがまた弱まった。現在ガスコンロ程の火力。

 暫く待っていると、佐々木さんが水を紙コップに入れて持ってきてくれた。
「さすがに手渡しは無理そうなんで、ここに置いておきますね」
そう言って佐々木さんはデスクにコップを置いて、にこやかに手を振りながら自分の部署に戻っていった。佐々木さんに感謝しながら私はコップに手をかけた。なんと水が沸騰して蒸発した。水を入れた紙コップは燃えないんだ―科学の実験みたいだな―とかそんなことを考えて現実逃避していると、改めて部長がこちらにやってきて、一言こう言った。

「今日は帰りなさい」
「ですよね」

 
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
ぬわああん ※未完
作者:匿名さん お題:真紅の怒りをまといし凡人 制限時間:2時間 読者:177 人 文字数:981字
学校はすっごくつまらない。みんないっつも同じ話ばかりしている。新しいゲームが面白くて宿題をやってないとか夕飯にカレーをつくったらみんながおいしいって言ってくれた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ふぉんふぉん お題:真紅の怒りをまといし凡人 制限時間:15分 読者:98 人 文字数:568字
「私はね、怒っているんだから」顔を真っ赤にしてさよこは言った。ぎょっとした。焦った。さよこがこんな風に怒ることがあるなんて。僕が、さよこと出会ったのは高校生の時 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:死んでも腸まで届くビフィズス菌bot お題:死にかけのヒーロー 制限時間:2時間 読者:22 人 文字数:3242字
アパートの隣の部屋の人から、お兄ちゃんが倒れたときいて、僕は「どうしようかなあ」と思いつつもお見舞いに行くことにしたのだ。けれど、病院に行ってみれば、丁度退院 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:汚い出会い 制限時間:2時間 読者:12 人 文字数:1737字
おれがなにしたって言うんだ…………。 倉蔵男(くら くらお)は何者かに抱きつかれていた。後ろから、きつく。顔は見えないが、おそらく相手は女だ。密着され、蔵男は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:死んでも腸まで届くビフィズス菌bot お題:死にかけの御曹司 制限時間:2時間 読者:21 人 文字数:4128字
困った時、焦った時、これ以上考えるのを辞めたくなった時に必ず頭の中に流れる曲があって、いつも何のメロディだったか思い出そうとするのだけれど、最近になってようや 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:なんで お題:来年のカリスマ 制限時間:2時間 読者:12 人 文字数:3053字
「栄光を得る者の手には、既に未来が確約されている。 その者が例え未熟な少年少女であろうと、掌には栄光が収まっているのだ。」 そういった話を誰かから聞いた。いつだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:クド/北ティアI03 お題:不思議なボーイズ 制限時間:2時間 読者:21 人 文字数:1437字
青空からモーターのような音が聞こえると思ったら、どんどん近づいてはっきりしたエンジン音となった。頭上を轟音と共に白いプロペラ機が飛んでいく。きっとあの廃墟へ向か 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
未完 ※未完
作者:antten お題:気高い夜中 制限時間:2時間 読者:25 人 文字数:913字
頭蓋骨の砕ける音は意外にも慎ましやかで、ひとつの命の終わる様がこれほど脆弱なものだと、女にはとても信じることができなかった。柄を強く握りしめてもう一度金槌を振 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:くのう(貼るタイプ) お題:興奮した光 制限時間:2時間 読者:29 人 文字数:2373字
男はひどく無気力だった、何が原因かとなるとよくわからないのだが、しいて言うなら何もないのが原因なのだ日々の生活に目的がない、目的がないから達成に向けて努力する 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:くのう お題:意外な冤罪 制限時間:2時間 読者:40 人 文字数:3472字
ノックの音がした。日曜日の午前、といっても時計を見るとまだ4時だった。こんな時間にいったい誰が、 ぼーっとした頭で起き上がり、夢でも見たのだろうかと思っていた 〈続きを読む〉

伊織千景の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:不幸な私 必須要素:大統領 制限時間:2時間 読者:238 人 文字数:1376字
上質なゴートファーラグの絨毯の上は、まるで巨大な獣の上を歩いているような錯覚を覚えさせる。 円状の室内には、トラディショナル家具ブランドの頂点、KINDELの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:来年のコメディ 必須要素:400字以内 制限時間:2時間 読者:284 人 文字数:400字
「来年のことを言うと鬼が笑うらしいですよ」「そうなのか」「来年は私、ちょっくら蜘蛛の糸でフリークライミングでもしようとおもってるんですよ」「そうなのか」「笑わな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:安全な誰か 必須要素:カレー 制限時間:2時間 読者:270 人 文字数:1798字
そろそろ前に進まないといけないと思いつつも、いつだって同じ所で堂々巡りだった。 今日だってそうだ。頭のなかでは幾つもの案が浮かんではいた。だけどそれのどれも実 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:コーヒーと感覚 必須要素:丑三つ時 制限時間:2時間 読者:262 人 文字数:1079字
研ぎ澄まされていく。刃物を研ぐように、鏡を磨くように。酒は現実を忘れさせてくれる。嫌なものから目をおおって、心地よい気持ちにしてくれる。だから嫌いだった。コーヒ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:シンプルなあの人 必須要素:時限爆弾 制限時間:2時間 読者:324 人 文字数:1525字
「いつまで泣いてるのよ」「……当たり前だ。こんな時位、泣かせてくれ」僕は、自分の声がかすれて震えるのを、どうしても止められない。怖かった。何故こんな目に自分が合 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:紅茶と計算 必須要素:バナナの皮 制限時間:1時間 読者:291 人 文字数:1374字
白一色、ロココ調の家具に囲まれ、純白のフリルのドレスに身をまとい、ロイヤルコペンハーゲンのティーカップに注がれた今日の紅茶は、フォートナムメイソンのアールグレ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:都会の死 必須要素:バツ印 制限時間:1時間 読者:264 人 文字数:991字
死はどんなものにも平等に訪れる。俺は赤錆びたその馬鹿高い鉄塔を見上げた。涙が溢れた。悲しいのではない、嬉しいのでもない。ただ、涙が出た。その鉄塔の名前は、かつて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:漆黒の闇に包まれし軽犯罪 必須要素:フォロワーの誰かを○す 制限時間:2時間 読者:271 人 文字数:1371字
「あんたには、何が見える?」錆びついたパイプ椅子に座り、俺は目の前に座るくたびれた様子の中年男性にそう問いかける。答えなど求めてはいない。一方通行の言葉は行き着 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:2つの円周率 必須要素:フォロワー達が○し合い 制限時間:2時間 読者:316 人 文字数:1211字
静寂が、全てを飲み込む。数万という観客がいながら、音一つ立たない。無音のプレッシャー。つばを飲み込むことさえはばかれる緊張。観客たちの視線は、ただ一点。中央に存 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊織千景 お題:謎の秋雨 必須要素:コーヒー牛乳 制限時間:2時間 読者:299 人 文字数:1635字
それは、雨のようだった。違うところがあるとしたら、それが赤い色をしていたことと、空からではなく、男の首から吹き出していたことくらいだろう。男は苦痛を感じるより、 〈続きを読む〉