お題:去年の監禁 必須要素:吾輩は猫である 制限時間:1時間 読者:460 人 文字数:923字

トイ
僕は猫だ。名前はまだ無い。
というかいらない。

二階分の階段を登り終え、通路に入って最初のドア。ポストの内側に引っ掛けてある鍵をとって鍵を開けと、冷房のきいた部屋が迎えてくれる。
住人である彼女はいない。
いつ僕が訪れてもいいように夏は冷房を、冬には暖房をつけたままにしてくれているのだ。

冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのボトルに口をつけながら寝室へ。いつものようにベッドに脱ぎ散らかしてあるパジャマを、いつものように片付けようとして、思いとどまりそのままのベッドに身を投げた。
息を大きく吸うと彼女の匂いがして、少し眠くなる。

無意識に左手を伸ばして、それに触れた。
ベッドの足に片方かけられた手錠。
あるいは、確認だったのかもしれない。そして、去年からずっとそのままであるそれを確認して、体を丸めた。

始まりは一年前の夏だった。
ありがちな飲み会、知り合いとか知り合いの知り合いとかなありがちなメンツ、ありがちなナリユキ。
ありがちでは無くなったのは、そんな ナリユキで彼女の部屋で目覚めた朝だった。
左手にかけられた手錠。
もおう一方はベッドの足にかけてある。混乱しているとドアが開き、「仕事行ってくるね」と彼女。そしてドアは閉まり、その向こう、玄関から彼女の外出する音が聞こえた。

元々能天気な性格と夏休み中だった事もあって、そのまま眠りに落ちた。
どれくらい眠っていたのだろう、目が覚めると彼女が顔を覗き込んでいた。

「早退しちゃった」

「トイレ」

そうか、そうだよねなんて笑いながら彼女は手錠を外し、僕はトイレに行き、戻ってくるとまた手錠をかけられた。
腕を振るとじゃらじゃらと音を立てた。

「重たい?キツい?」

「いや、別に」

それから僕と彼女の生活が始まった。


頬に指の感触を感じて緩やかに覚醒する。

「来てたんだ」

彼女が頬をつついていた指を僕の唇に這わせる。

「おはよ」それから彼女に指を口に含みかけて、思い出したように聞いてみる。「もう手錠しないの?」

「だってもう躾けたから。ほら、ちゃんと帰ってくるし」

そういって彼女は微笑んだ。
僕は爪を立てる代わりに、彼女の指に歯を立てた。
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