お題:戦艦の寒空 必須要素:スマホ 制限時間:30分 読者:374 人 文字数:1379字

ミリヲタ少女が初めて自衛艦に乗る!
「自衛隊の戦艦、見に行かないか?」
 ある日突然父にそう訊かれた。
「は?」
「海上自衛隊の戦艦が小樽の港に入港するらしいんだ。友達のツテで中に入れることになったんだが……興味ないよな?」
 父は話を振っておいて、語尾が尻すぼみになった。あたしがよっぽどすごい顔していたせいかもしれない。
「行く!」
 あたしは力一杯に大声で返事した。父は一差し指を立ててあたしにシーのジェスチャーをした。

 世間では「艦これ」なんてのが流行しているとかで、自衛隊人気もうなぎ登りらしいのだが、あたしはそんな流行がくるずっと前から軍隊が好きだった。戦車、戦闘機、戦艦、高射砲、ありとあらゆる軍事に関わるモノが好き。いわゆるミリオタというヤツである。だが、これは両親も知らない内緒の趣味だった。女の子がそんなものに興味を示すこと自体忌避されるというのにだ。
 そもそもは、父方の祖父が陸上自衛隊員だったことに起因する。だから、父は比較的そっちの方には寛容なのだが、いかんせん母が軍隊嫌いで、聞いた話によると、交際中に父が自衛隊に士官しようとしたところを、士官するなら別れると強引に父の志望を取り下げさせたという話らしい。しかも、祖父が生前はほとんど父の実家に寄りつくことさえしなかったという話だ。

 しかし、血は争えないモノで、隔世遺伝ですっかりあたしは祖父の血を引いたらしい。

「ねぇ。お母さんって、どうして軍隊嫌いなんだろ?」
 見学当日、父の車で小樽に向かう途中あたしは何気なくそう訊いた。
「んー。なんでなんだろな?」
「お父さんも知らないの?」
「あんまり詳しくは知らないんだけどね、お母さんの親戚にも軍人がいたらしいんだ。それで逆に嫌になったんじゃないかな。おばあちゃんもあんまり詳しく話してくれないから」
「そうなんだー」
 あたしは助手席で父の話を聞きながらスマホで今日の今日の入港する予定の艦艇について調べた。
「え。なにこれ……戦艦じゃないじゃーん。練習艦だってー。『かしま』だって」
「え?それって、戦艦と違うのか?」
 これでも、自衛官に任官する寸前までいった人だろうかと疑う。
「違うわよ-」
「お前、随分詳しいんだな……」
「おっと……あははー」
 あたしは笑って誤魔化そうとした。
「いや、知ってるんだぞ。お母さんには内緒だけどな」
「知ってるって?」
「そりゃ、娘の趣味くらいはな。だから今日誘ったのもあるんだしな」
 うわー、バレバレだったんだ。
「お母さんはまだ気がついてないみたいだけどな。うまくやれよ」
「あはは……うん」

 小樽の港に着くと、外はあいにくと吹雪いていた。横向きに降る雪の向こうに大きな船影が見えた。
「うおー」
 あたしは女の子らしくない叫び声を上げていた。戦艦ではないけれど、自衛艦を実物を見るのは初めてだったからだ。
「すごいね」
「すごいな」
 やっぱり、子供だな、とでも思ったのだろう。父は少し優しい顔になった。寒空の下、残念ながらセンカンではなかったけれど、実際の船を見ることができて、実際あたしは嬉しかった。
「乗れるの?」
「もちろん、乗れるさ」
 車を駐車場に止めて、沢山の自衛官に誘導されて受け付けを済ませ、船に向かう。

 いざ!出陣!

 背後からおじいちゃんの声がしたような気がした。
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