お題:可愛い町 制限時間:15分 読者:1036 人 文字数:1889字

おにんぎょうあそび。
[ジャンル:ファンタジー]

 そこは、甘い町。
 屋根はチョコレート、扉は砂糖菓子。
 庭に生えている木はマシュマロで、その幹は飴でできている。
 もちろんグミの実だってなる、お菓子のほうのね。

 ふわふわピンクでどこを齧ってもおいしい町。
 そこが私の住んでいる町。

 ここではおしごともべんきょうもなあんにもないのよ。


「あら、チィコちゃん」
 近所のおばさんが話しかける。
 ウサギのチィコは、あらひさしぶり、とタヌキのおばさんに答えるの。
「ヨシダのおばちゃん、おひさしぶりですー」
「また大きくなったわねぇー」
 てへへー、っとチィコは照れて笑うのよ。
 そして……。

**********

「えっと、そして……」
「どうしたんだよ、続きは?」
 私たちは今、有名なお人形セットで遊んでいるの。
 動物の住人たちと、かわいい家具が一緒のやつよ。
 去年、サンタさんがくれたの。
 起きたら枕元に置いてあったの、サンタさんっていつも私が欲しいものをくれるのよ、すごいわ!
 ママにはいくら言ってもダメなの、どうせサンタさんがくれるでしょって。
 こういうの、たりきほんがん、っていうんでしょ?

 目の前にいるのは、お隣のシロウ君。
 一緒に何をして遊ぶかで、ジャンケンに買ったから、私はおままごとがいいって言ったの。
 でも、シロウ君はいやだって。
 だから、せっかくのお人形を使って、人形劇をすることにしたの。
 私はこの子たちといつもお話して遊んでるから。

 でもなんでだか、シロウ君の前だとうまく言葉が出てこないの。
 いつもすらすら喋るタヌキのヨシダのおばちゃんも、ウサギのチィコもだんまりよ。

「ええっと……」
「仕方ねぇなあ」
 シロウ君は、近くのイヌの男の子を手にとったの。
「おいおいチィコ、どうしたんだ」
 声をなるべく自分じゃないような言い方で(こういうの、こわいろ、っていうの?)、シロウ君は話し始めた。
 きっとイヌの子をやってくれるのね?
「あらあら、あなたのお名前は?」
 タヌキの、ヨシダのおばちゃんがはじめましての――ううん、本当ははじめましてじゃないんだけど、いつも私が一緒に遊ばせているのだけど、今日は中身が違うから、はじめましてなの――男の子に話しかけるの。
「おいおい、ボケがはじまっちまったのかよオバサン! 俺はタロウって言うんだぜ」
「あらあらそうだったかしらごめんなさいね」
 ヨシダのおばちゃん、かわいそう。何度もぺこぺこと頭をさげているの。
「もういいよ! 俺は今日はチィコと遊ぶ予定があるんだ!」
「あらそうだったの、いってらっしゃい」
 お人形はみんな腕が上下にしか動かないから、ヨシダのおばちゃんは体を全体使って横に揺れる。
 いってらっしゃい、の、ために。
「タロウ君、今日はどこに連れて行ってくれるの?」
 チィコが、タロウ君と手をつなぎながら答えるの。
 ……つなぐ場所なんてないんだけど、くっついているから、きっとつないでいるのよ。
「自分で考えろよー、お前もたまにはさ!」
「ううーん、じゃあ、タロウ君の好きなサッカーでいいよ」
「おお、いいこと言うじゃないか」
 私は近くのビー玉を、適当に持ってくる。
 そして、公園という設定のマットの上で、それを転がした。
「飴玉のボールなの」
「割れたりしないのか?」
「最強の飴玉だから、大丈夫!」
「最強なら仕方ないな!」
 そして、チィコとタロウ君は一緒にサッカーをはじめるの。
 二人共足は動かせないから、体全部を使って、ビー玉をぶつけ合うのよ。


************

 うちのカオリは内気な子だ。
 あんまり幼稚園でも友達ができないでいる。
 そんな中、ご近所の志郎君は結構うちに遊びに来てくれている。
「おばさんの焼くケーキうまいんだ」
 そう言ってくれて、それを口実にしてくれている子だ。確かに、女の子と二人きりになるというのが分かっていながら遊びに来るなんて、そんな口実でもないと恥ずかしいに違いない。
 あの年でも、男の子は男の子なのだから。

 カオリの部屋からは、楽しげな声が響いている。
 そうっとドアの隙間から中を覗くと、人形を使ってビー玉でサッカーのような遊びをしていた。
 いつもありがとうね、志郎君。
 そう言い出せないカオリの表情は、今もとても笑顔で。親にも見せない顔をしていた。
 買ってあげてよかったわ、あれ。

 私は、中に入らず、そっと部屋の前にケーキとジュースを置いて立ち去ったのだった。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:らしる お題:輝く天才 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:801字
いつの日からだろう。空に太陽が昇らなくなったのは。「俺がやるしかないんだ。だって俺は天才だろ」「待てよ。皆野光。確かにお前は天才だ。お前は世界一だ。けど、お前が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
天才未満 ※未完
作者:匿名さん お題:輝く天才 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:533字
彼女は間違いなく天才だった。 年齢の問題から“神童”という立場に甘んじてはいたが、その才能はこの先彼女の人生を喰い潰して更に輝くものだと誰もかれもが確信してい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:庵二/あんじ お題:ゆるふわな躍動 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:842字
「おれね、明日しんじゃうんです」「は?」秋も本番に入ってきた十月下旬、四月になれば桃色の花が視界を埋め尽くす木々の下、境界を示す縁の上を両手を広げて歩く生徒はな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:白風水雪 お題:ゆるふわな躍動 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:550字
ゆるやかで、柔らかな、白い結晶が空から舞い降りた。 それは天使の囁きか、空の哀しみか。冷たくて、体温だけで触れると溶ける氷の芸術。 雪だ。 とても綺麗で。 と 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ホノミ お題:高いにわか雨 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:972字
「今日の降水確率は.....」お天気お姉さんとやらが、朝に似合わない高い声で今日の天気を告げていた。気象予報士も顔で選ぶ時代になったか、とつぶやく。それを聞いた 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:よっきち お題:素朴な雨 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:682字
雨の日のバス停ほど待ち長いものはないだろう。時折地面に落ちた雨粒が跳ね返り僕の膝元を濡らす。ああ、雨はやっぱりあまり好きじゃないな。「ーーあの」凛と澄んだ声が僕 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:夜の復讐 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:454字
闇に忍び影に生きる。我ら忍びの者なりーー。「にいちゃーん、少し早くない?」目の前を颯爽と、かつ軽快に進む兄を前に私は後ろを追いかけるので精一杯だ。「何を言ってる 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:地獄の負傷 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:328字
「最近の人間は弱ええな。すぐに弱音を吐く」 重苦しくため息を吐いた鬼はぎろり、と足元の人間を見た。まだまだ、地獄にいる罪の清算を背負わされた人間たちより傷の少な 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:がしゃ お題:栄光の殺人 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1027字
私は、しがない商人をやっております。ええ、それはもちろん。色んな国をまわっておりますとも。そんなこんなで今、私はこの国に来ているのですよ。商売をするために、ね。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:三ツ矢凜 お題:地獄の負傷 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:628字
ある男が戦いで傷を負った。男は傭兵業をしており、その傷は致命的だった。生き残ることは出来たものの、その後彼は戦うことが出来なくなった。それからというもの、男は 〈続きを読む〉

幾山アカリの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:阿修羅探偵 制限時間:15分 読者:631 人 文字数:1678字
[ジャンル:現代?] 阿修羅という単語がある。 仏教やインド神話、様々な場所に出てくる単語だが、元来は神の一人の扱いであった。 しかし、徐々に「神に敵対するもの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:生かされた運命 制限時間:15分 読者:590 人 文字数:1608字
[ジャンル:ファンタジー?] 生きている人間が、生き残った人間がするべきこととはなんだろうか。 僕は、焼け野原の中心に立ち尽くして考えた。 僕は、よくある田舎の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:いわゆる悪魔 制限時間:15分 読者:529 人 文字数:1656字
ジャンル:現代 さて、私の目の前にいるものはなんであろうか。 ……小学生の頃から、おまじないなどには興味があり、すきあらばそういったことにチャレンジしてきていた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:純粋な夕飯 制限時間:15分 読者:838 人 文字数:1759字
ジャンル:現在 こんな異常な状況は、初めてだった。 そして、こんなにもマトモな食事は、久しぶりだった。----------------------------- 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:魅惑の冤罪 制限時間:15分 読者:697 人 文字数:1656字
ジャンル: 私は罪を侵してなどいない。 燃えるような民衆の瞳、眼差しの集まるその頂点で、私は一人、佇んでいた。 私の後ろには十字架がある。 それは私の体を縛り付 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:可愛い町 制限時間:15分 読者:1036 人 文字数:1889字
[ジャンル:ファンタジー] そこは、甘い町。 屋根はチョコレート、扉は砂糖菓子。 庭に生えている木はマシュマロで、その幹は飴でできている。 もちろんグミの実だっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:誰かのつるつる 制限時間:1時間 読者:847 人 文字数:6395字
[ジャンル:ファンタジー] 私は冒険者だ。 世界中の遺跡や魔物が棲むという危険な洞窟、様々な場所を行き来してお宝を手にしてそれを売買することを生業としている。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:君とクレジットカード 必須要素:文学フリマ 制限時間:15分 読者:760 人 文字数:1824字
[ジャンル:現代] 使っても使っても、現金がなくならない。 そんな錯覚を覚えていた。 そんなわけがないのに、私はクレジットカードというものの罠にすっかりハマって 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:思い出の雑踏 必須要素:文学フリマ 制限時間:15分 読者:847 人 文字数:1792字
[ジャンル:現代] 懐かしい思いを噛み締めながら、私は雑踏を歩く。 周りの人々は一様に、多少の差はあれどにこやかな笑顔だった。 手にわたあめを持ってはしゃぐ子供 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:幾山アカリ お題:今度の電撃 制限時間:15分 読者:1030 人 文字数:1656字
[ジャンル:現代] ライトノベルという単語が出来たのはいつの頃だっただろうか。 それまで小説というのは小説という単語以外は存在しておらず、コラムだとか社説だとか 〈続きを読む〉