お題:君とクレジットカード 必須要素:文学フリマ 制限時間:15分 読者:740 人 文字数:1824字

二本立て 君とクレカ
[ジャンル:現代]

 使っても使っても、現金がなくならない。
 そんな錯覚を覚えていた。

 そんなわけがないのに、私はクレジットカードというものの罠にすっかりハマってしまっていた。
 今、多大な請求を前に頭を抱え込んで、胃を痛めながら実家の電話番号を携帯からかけようとダイヤルボタンを押そうとしては留まっているような状態だ。
 もうだめだ、自己破産するしかない。
 そんな考えが私の頭の中をよぎった。

***

「という書き出しですが、いかが?」
 私は原稿を後輩に見せる。
 大学の後輩は、うーんと頭をかしげた。
「いきなり欝展開ですね」
「だよね、私もそう思う……」
 クレジットカードというものにあまりいい印象を抱いていないせいかもしれない。
 正しく使えば、現金を持ち歩いてチャラ銭の処理に困るなんてことはないし、お店の人も大抵はつり銭を間違えずに済むのでラクだろう。ただ日本は外国ほどクレジットカードが進歩していないので、現金で処理したほうが早くて確実なことも多いのがネックだが。
 しかしながら、ネット通販などはクレジットがメインだ。
 今時一枚も持ってないのはどうかと、とこの後輩にも言われたくらいに、私はクレジットカード電子マネーその他のたぐいを嫌っているのだった。

 私とこの後輩は同じ学科の先輩後輩だ。
 高校時代は同じ部活での先輩後輩であったわけだが……。
 今はそういった枠組みを超えて、個人的に仲良くなっていた。

「ちゃんと無くなったら保証もしてくれますよ、先輩は怖がってるだけですって」
「とは言うものの……、盗まれて使い込まれて、って恐怖はやっぱりつきまとうのよね」
「サービス会社にもよりますが、大抵保証してくれますよ」
「それを逆にわざと使う人がいたらどうするのよ」
「犯罪ですからちゃんと取り締まられますから」
 後輩の弁を幾度聞いても、納得はいかないままだった。
「いざ持ってみれば変わりますよ。電子マネーも、無人レジとか使う場合なら便利だし」
「その持ってみる、のハードルが高すぎるのよ!」
「先輩本当に社会人の卵ですか……」
 呆れたその表情が堪らない。



なんだか短くまとまってしまったのでもう一作。
残り7分。

--------------------------------<キリトリ線>--------------------------------


 粗品の誘惑に負けて、作ってしまった、とうとう。
 今日私のもとに、進展で届いた封筒をあけた。
 そこには新品ピカピカのクレジットカード。
「多分使わないとは思うんだけどね……」
 私はそれをしげしげと眺めた。

 とくに物欲が強いわけではなかった。
 買い物は現金でいいと思っていた。
 だが、このネット社会の発達において、次第にそれは無視できない課題へとなっていく。
 とうとう弟がネットでしか購入できないゲームが欲しいと言い出したものだから、学生の彼では作れないこれを私が作るはめになって。
 ……粗品に、調度切らしていたラップがあったのも悪いのだ。

 そして私はそれを作ることになった。

 弟は喜び勇んで早速ゲームを買いに走っていたが、それを一個で止めるのは至難の業だった。
 やはり、人は一度タガが外れるととどまることは難しいのだろうか。
 そのカセを簡単に外してしまえるのがこういうカードなのだとしたら、やっぱり少し怖いな、と思うのだ。

 弟はつまらなそうに、仕方ないなあ、と言葉を吐くとその最初おねだりしていたゲームを開始した。
 私はその様子を見守ると、厳重に鍵付きの引き出しで保管した。


 次の日、クレジットカードが無くなっていた。
 すぐにクレカ会社に電話して使用を止めてもらったが、使用痕跡は既にあるらしかった。

 そして、もしやと思い私は弟の部屋へと向かう。
 そこには、嬉々としてまた別のゲームで遊んでいる弟の姿があった。
 その近くには、私のクレジットカードが。


 耳を釣り上げてやるだけでは恐らく反省しないだろう、ということで、カード会社に事情を説明して、この弟には小遣いから全部天引きしてもらうことにした。
 これで少しは懲りるだろうか。


 そう思っていたが、弟は次の日は無料のゲームで遊んでいた。
 せめて一つをしっかり遊んでから次にいきなさいよ。
 呆れるばかりだった。
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