お題:今年の発言 制限時間:2時間 読者:718 人 文字数:2432字

Killing By My Word
突然呼び出された10畳半のとある一室。
俺を呼び出した奴は、高らかにこう告げた。


浩介「新年!明けました!!!」


当然のことながら、俺は次の言葉に詰まった。
なぜならば、本日は4月5日。
つまり、すでに今年になってから4か月目ということだ。
にもかかわらず、俺の目の前にいる奴は、手元にあるジュース缶を投げつけたくなるほどの
ドヤ顔でこちらを見ており、俺の返答を明らかに期待している目つきである。


浩介「なぁなぁ、なんか言うことは?なぁ!?」


残念だが、お前に返す言葉は一言も出てこないぞ、浩介。
俺なりに考えた結果、その間26秒。
浩介が用意していた未開封のジュース缶をいくつかカバンに詰め込み、
無言で立ち上がって部屋のドアの方へと足を向けr


浩介「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!なんで!なんで無言で帰るのぉ!?」


非常に面倒臭い。
突拍子もないことに定評のある浩介だ、面倒事に巻き込まれるに違いない。
付き合いが長いからこそ、何があってもここは全力で帰宅フラグを死守せねば。


浩介「比呂ぉ~(泣)」


男が泣きそうな声を出してもグッとは来ないぞ。


浩介「せめて話だけでも聞いていけよぉ~!」


グズり出した。
今このまま帰れば、恐らく着信ラッシュが待っている。
一度着信拒否を発動したことがあったが、その時は本当に酷かった。
PCが壊れるかと思うほどの、スパムのごときメールラッシュが来た。
確かに無視した俺も悪かったかもしれないが、奴の犯罪レベルの行動力はヤバイ。
出来る限り穏便に済ませるべく、俺はため息をつきながら再び座布団に座った。


浩介「あのなあのな!比呂って無口じゃん?
   だから、今年から比呂の語録を作ることにしました!」


それが冒頭の浩介の発言とどう繋がるのだろうか。
テーブルの上にまだ残っていたジュース缶に手を伸ばし、グビッと喉に通す。


浩介「本当は去年からやりたかったんだけど~、猫にビリビリに破かれちゃて~(↓)」


去年もやってたのか。
第一、人の語録なんて作って何が楽しいのか。


浩介「で!新年明けたのに、今年俺は比呂の言葉を一度も聞いていない!」


そりゃあ、大体メールで済ませてたからな。
というか、今日いきなり俺を呼び出した時だって、一方的に通話切っただろ。
むしろ、「もしもし」と俺が言う前に用件だけ伝えたのは浩介だ。


浩介「さっきだって、俺が高らかに新年が明けたことを教えてやったのに、
   ほぼ無表情で無言で!そしてほぼ無音で立ち上がって帰ろうとした!!!」


まぁ、構うのが面倒だと判断したためだが。


浩介「比呂!お前、俺の前でもっと喋れよ!ちゃんと言葉を発しろ!」


いやいや、本当にお前の願望やら命令やらの意味がわからん。
そこに至るまでの経緯が省かれ過ぎていて謎すぎる。
=面倒事だと判断されても全くおかしくない事態なうだぞ。


浩介「比呂ぉ・・・ジュースはいくらでもあるからよぉ・・・!(泣)」


ジュースを淡々と飲み続けるだけの作業をしていたことにやっと気づいたらしい。
しかし、喋る必要もないと判断している状況で喋れと言われても困る。
喋るくらいなら、ジュースを飲んでいたい。
あ、カバンには6本ほど詰め込んだが、もう少し詰め込んでおこう。


浩介「ほら!持って帰る分ならまだあるから!な!?その分喋れ!」


だが断る。
と、声に出して言う代わりに、ジュースを片手に首を振った。


浩介「嫌だって言う時も!ちゃんと言葉にして!」


本当に面倒な奴だ。
呼び出された時点で何かしらの面倒事は確かに覚悟していたつもりだったが。
ここまで面倒だとは思わなかった。


浩介「なんで喋ってくれないんだよ!?俺が何かしたのか!?」


うん、した。
強いて言うなら、いろいろしてたよな?
とはいえ、そんなものが理由で喋らないわけではない。
普段から喋っていないから、あえて喋るつもりはない、というだけ。


浩介「あ、わかった!今年に入って、俺がリア充になったからか!?」


なん・・・だと・・・。
初耳だぞ、その情報。
こんなぶっ飛び人間に、彼女ができたなどと・・・・・
認めん、認めたくない、認めてたまるかそんなもの!


浩介「って、もしや今知ったパターンか!?
   黙っててゴメン!マジゴメン!サーセン!
   だってほら・・・彼女、あんまり可愛いもんだから、つい(笑)」


てへ☆と、語尾に何かしらの記号がついているような笑顔を向ける浩介。
超絶腹が立った。
ついでに俺は、再び立ち上がった。


浩介「ちょおおおおおおおおお!?待った、全力で待ったぁあああ!」


ドアノブに手をかけると、高速で後ろから両肩を掴まれた。
その穢らわしくウザい手を離せ、と視線で訴える。


浩介「一言以上発するまでは、絶対に帰さないからな!」


だが向こうも折れていない。
何もせずに強行で帰れば、今度はPCアタックだけでは済まないだろう。
しかし、言葉を発すると言っても、なんというべきか。
考える事、43秒。
ふと、閃いた。


浩介「お?なんだなんだ?」


若干期待を孕んだ眼差しを向けてくる浩介。
俺は静かに息を吸い込み、帰宅するために一言つぶやいた。


比呂「リア充爆ぜろ☆そして死ね」


それはもう、キラキラとした憎悪と呪いを込めた笑顔を添えて。
俺の言葉を受け取った浩介は、目を点にしてその場に固まってしまった。
目の前で手をひらひらさせても無反応になったので、
ジュース缶をもう少し頂戴してから俺はその場を後にした。
なかなか重くなったカバンを背負いつつ、なんだかすっきりした気分だった。
その後、浩介が俺に「喋れ」とせがむことは・・・・・嬉しい事に、なくなった。





The End.
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